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2014年1月 3日 (金)

楽園は森林(もり)の中にあります?

P1025922  足尾で森づくりをやっていると、森林(もり)は、生きていく知恵や生物社会の一員であることの再認識、そして自然の脅威を私たちに教えてくます。

P1021550  9年前に植林した幼木は幹の径が5~6ミリ程度、樹高が1㍍以下でした。今では、その幼木は樹高が7㍍を超え、幹の径は大人の腕の太さを超えました。この木々は一昨年の台風15号の豪雨、昨年の台風18号の豪雨に遭っても土砂や岩をガードして土砂の流出はありませんでした。ところがこの小さな森林(もり)の対岸の岩山斜面では、その豪雨によって一気にいくつもの滝ができ、岩や石などが流されました。この時季、鹿やサルそしてカモシカがこの斜面を移動する度に石が転がり落ちます。私たちが植林しているこの辺は栃木県が管理している土砂流出防止保安林地帯ですが、その意味を森林(もり)は教えてくれます。 

P2143389 特に、昨年は豪雨の猛威が世界各国を襲い、洪水、土石流、土砂流失、がけ崩れ等を引き起こし、多くの犠牲者と被害をもたらしました。これらのニュースを耳にするたびに、世界の人々のライフスタイルを見直さなければならないと感じます。そして見直すヒントのひとつは生物社会の掟なのかもしれません。 

 足尾の現場に立っていると、“ここには松木村当時から生えていた木を植えてくれ!植林した後は草との競争に負けないように草を刈ってくれ!その後は生物社会の掟があるから心配するな!”と、谷風がささやいでいる気がします。

 私たちの森づくりは、まだ、植林してから9年程ですから、これからも色々な知恵と自然の怖ろしさを教えられることでしょう。ちなみに、明治神宮の杜は100年先を見据えた森づくり設計です。杜の植林は1915年に始まりしまたから、神宮の杜は間もなく100年を迎えます。 

P5154448  松木渓谷を訪れる皆さんとの出会いを楽しむために設置した「遊働楽舎」(愛称名:みちくさ)の西側に、一昨年、池を造りました。池には一カ月も経たないうちにミズスマシやボウフラなどの虫が集まり、昨年の夏にはヤマアカガエルが産卵し、孵化した子どもたちは山に巣立っていきました。これには驚きました。さらに驚いたことは、アナグマが池の近くに現れたことでした。オタマジャクシは無事でしたが、雑食のアナグマには美味しいご馳走の匂いがしていたのでしょうか。 

Pc123170  この時季は森を育てている私たちにとっては鹿や猿の食害対策に追われます。私たちにはススキやチカラシバ等の葉を食べてほしいと思うのですが、鹿や猿はその葉は食べてくれません。鹿は前足で雪をどかして何かを食べていますが、雪が多いと食害防止柵を飛び越えて、あるいはネットを噛みきって柵内に入り、若木の樹皮と冬芽を食べます。

P7011971  これは生きていくための当たり前なことでありますが、「成木になるまで待ってくれ!」と心に言い聞かせて、ホイッスルの音や大声で鹿や猿を柵外に追い出しています。特に、桜の花が咲く頃の猿には困ります。桜の本数が少ないこともあって、猿は半日で全ての花を食べてしまいます。

P4281054  鹿や猿にとっては美味しい皮や冬芽、甘い蜜を含んだ桜の花を食べられることが彼らの“楽園”と感じる瞬間かもしれません。私たちにとっては荒涼とした岩山の背景に映える桜の花が見えることが楽しみなのですが・・。どちらをとるのかは人間の暮らし方に左右されるようです。

 原発に頼らない森と共に生きていくライフスタイルということは、森林(もり)から授かる恵みや知恵が人間の暮らしのベースになっていること、つまり、生物社会の一員に過ぎないということを絶対に忘れない、ということが大前提になるのかもしれません。 

Pc123174  楽園探しは、“生きている”ということではなく、“生かされている”ことを発見することかもしれません。皆さんも、楽園探しの旅に出かけましょう。本年もよろしくお願いします。

2014年1月(理事・高橋佳夫)

 

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