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2020年5月

2020年5月30日 (土)

コロナ禍1人では弱いけれど、仲間がいれば乗り越えられる

今月 25 日に、緊急事態宣言が全国すべてで解除されました。自粛生活の終わりや経済活動の再開を期待する一方で、新型コロナウイルスの終息が見えないことへの不安の声も聞かれます。人類は新型コロナウイルスに対して未だ武器(感染を防ぐワクチン、発症を抑える治療薬)を持ち合わせていません。この武器が完成しなければ、残念ながらこの闘いは暫く続きます。

20200415_145111 今回の新型コロナウイルスは、行き過ぎたグローバリズムによって全世界に急速に拡がっていったと思います。歴史を見ても、人間は生活を豊かにしていくために世界中で動物の生
活圏へと入り込み、自然を破壊する行為をしてきました。そのことへの反動としてのウイルス感染であり、頻発する自然災害に対して人間は無力であることを実感しています。

91 そして、ウイルスの恐怖に怯え、パニックになり、食料品やマスク・トイレットペーパーなどの買い占めや転売が起きた報道を見ると、周りが見えなくなり、誰しもが自分ファーストに陥ってしまう弱い面を持っていることを感じました。20200530_202449_2
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また、マスク不足が深刻になって肌で感じたのは、日本では資源の多くを輸入に頼っているということです。農水省の HP によると、平成 30 年度の食料自給率は、カロリーベースで37%、生産額ベースで 66%となっています。海外依存からの脱却や他県からわざわざ環境に負荷をかけて経済を回すことなく、地域でヒト・モノ・カネを循環させ、雇用やコミュニティ―を生み出すことが必要だと思います。そのためにも、長い目で見て、ウイルスと共存共生していく現実を受け入れて、○○ファーストではなく、周りの人と協調し、他人の心を思いやりながら共に支えあう社会づくりを模索していきたい。
1526855090183_6 (東京事務所・小林敬)

2020年5月20日 (水)

「森林の日」に描いた“自給自足と地産地消”がベースの今後の暮らし

 本日(5/20)は森林の日。日本の国土の約7割が森林であり森林率は世界でも3番目の森林王国である。その全森林面積の約4割が人工林の杉、檜である。人工林は十分な手入れがされず不健全な森になっている。異常気象の局地的大雨ではその杉、檜が甚大な災害を引き起こす要因にもなっている。

Dscn2386 足尾精錬所跡

 子供の日、地球温暖化の危機を止める文が目に留まった。それは、「最近地球温暖化による漁業や農業の被害をテレビで目の当たりにすることが多い。農業の例で言えば例年に比べ気温が高いため雪が降らず土が凍り野菜が出荷できなくなってしまう。漁業では水温が高いままで例年取れる魚がとれないということも起きている。この温暖化を止める1つの方法として排気ガス等を削減することが大切だと僕は思う。排気ガスを減らすためにすることは沢山あるが一番取り組みやすいのは、歩いて行ける所には車は使わない事だ。たったこれだけでも排気ガスを削減できます。難しく考えずに身近なことから取り組んでいくことが大切だ」という12歳男子が書いた文。

Dscn2388 半世紀後も続く緑化事業

 男子の文が胸に響き、今までの森づくりの延長線上では駄目だと思った。心を入れ変えて、次世代の命を育む基盤となる木を植えようとシニアに呼びかけ、私の森づくりエリアの足尾で木を植えていく。

Photo  木を植えながら、新型コロナウイルス感染脅威で考えさせられた今後の日本の暮らし方を語り合いたい。そのひとつは「自給自足・地産地消」であり、その暮らしの基盤は健全な森の恵みが持続していくことが前提ではないか。そのための森づくり運動を描いてみた「森林の日」。シニアは縁側でのんびりしている場合ではない。今後も異常気象とウイルスの脅威は止まらない。シニアは次世代のために1本でも木を植えよう。(森びとアドバイザー:松井富夫)

 

2020年5月11日 (月)

生物生存の危機を迎えないために、地球温暖化防止は待ったなし!

 昨年末からの記録的な暖冬により山や里に雪が降らず、田植え用の水は大丈夫だろうかと心配をしていましたが、山に降った雨を木々が根に溜め、地中を通じて川に湧き出た水が、用水路を通じて“田んぼ”に給水され、田植えが行われていました。兼業農家が多くなっているのでGWが田植えのピークになっていましたが、川の水量が少なく下流域まで届くには時間がかかっているようです。

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 そして、地下水を井戸(水道)で汲み上げ利用できる“水の循環”によって私たち人間の命はつなげられていることを実感します。
二毛作の農地の麦畑ではツバメやヒバリが虫を捕るために忙しく飛び交い、田植えの終わった水田の中では、カモが水中の草を食んでいました。森の恵みは下流域の生き物たちの命をつないでいます。

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 「八十八の手間をかけて米は作られる」といわれますが、我が家で消費する米は、栃木県内の小さな河川・姿川の水を引き込んだ“田んぼ”で実家の兄が育てたコシヒカリです。秋の収穫が待ち遠しいですが、昨年の台風19号では増水した水が堤防を越え、川沿いの田畑に土砂が流入してしまいました。実家の田んぼは被害をまぬかれましたが、広いエリアが水につかりました。今年の田植えは大丈夫かと心配しましたが、復旧工事が進み田植えが行われており安心しました。

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 農家の皆さんが手塩にかけて育てた米や野菜が水につかる映像は、育てた方の悲しみが伝わり、いたたまれない気持ちになりました。
今年は穏やかな気候を望みますが、5月6日沖縄県糸満市では1時間に約110ミリの猛烈な雨が降り「記録的短時間大雨情報」が発表されました。新型コロナウイルス感染の世界的拡大により経済活動が停滞した結果、温室効果ガス排出が一時的に低下したようですが、気候変動・温暖化の速度は上がっているように感じます。

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 今年1月14日に2019年の世界の海水温度が記録史上最高となったことを科学者らが発表しました(AFPBB NEWS)。人為的な温室効果ガス排出による海洋温度の進行ペースがますます早くなっており、地球の気候に破滅的な影響が及ぶおそれがあるといいます。学術誌「Advances in Atmospheric Sciences」に掲載された研究論文によると2019年の海水温は過去(1981年~2010年)の平均値を0.075℃上回ったといいます。0.075℃上昇するためには、228ゼタジュール(10の21乗ジュール)の熱量が必要で、論文の執筆者のチェン・リジン氏がCNNのインタビューに答えた内容によると、広島に投下された原爆の熱量は63兆ジュール、過去25年間で海に蓄積された熱量は、その36億個分に相当し、毎秒4個の原爆を投下し続けたのと同じ熱量になるそうです。想像もできないほどの熱量です。
 そして、オーストラリア南東部で数カ月猛威を振るった森林火災など気候関連の災害と海洋温暖化との間には明確な関連性が存在するといいます。
 さらに、世界気象機関(WMO)は4月22日(アースデー・地球の日)、過去50年間で世界の平均気温が0.86℃上昇したと発表しました。今後5年間で平均温度はさらに上昇すると見込まれ、特に高緯度地域で影響が深刻になると予測し、地球温暖化に警鐘を鳴らしました。

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 2005年9月3日、「このままでは地球がおかしくなってしまうのでは?」という危機感から、地球上のすべての生命にとって欠かすことのできない「いのちの森」をつくろうと、故岸井成格前理事長を先頭に“森びとプロ”を結成し、足尾の地から森づくりをスタートしました。5月15日、岸井前理事長の命日を迎えます。荒廃地での15年の森づくり・育樹活動を通じて成長した現在(春)の足尾の森・杜では、桜が咲き、林床にも可憐な花が咲き、鳥や虫たちが花をついばみ、蜜を吸っています。民集の杜に卒寿記念で植樹した“ホウノキ”も芽吹き、旧松木村の各森も若葉を広げ始めています。

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 オーストラリアの森林火災は10億匹以上の生き物の命を奪いました。失われた命を戻すことはできませんが、森を再生することで新たな命の営みをつくりだすことができることを15年の森づくりが教えてくれます。

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 故岸井前理事長は、政治の“劣化”を憂い「自然環境も、市民のパワーも“劣化”させてはならない」と私たちに“檄”を飛ばしました。新型コロナウイルス後の経済復興で地球温暖化の進行では“新たなウイルスの危機”を生みだしかねず、「新しい生活様式」は私たちの生活スタイルの見直しと同時に、石炭火力・原子力依存を脱却し、再生可能エネルギーへの転換を求めていかなければ“生物生存の危機”を招いてしまいます。

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 「地球温暖化防止は待ったなし!」、“天空の森”の故岸井前理事長の声が足尾、八幡平、南相馬の森に響いているように感じます。森ともの皆さんと手を携え、自然環境と人間の命を大切にする心を育み、“山と心に木を植えて”いきます。
(理事 清水卓)