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2020年9月

2020年9月30日 (水)

脱炭素社会への本気度を私たちから

 9/25、有志の学生によるネットワークが主催して、日本各地で政府に対して気候変動に迅速な対策を求める「シューズアクション」が開催されました。

Buz_origin_1_1_thum8001  EUのフォンデアライエン欧州委員長は16日のEU一般教書演説で、2030年に域内の温暖化ガスの排出量を、従来の40%減から引き上げ、1990年比で少なくとも55%減らすと表明した(時事通信 9/22)。

20200921at32s_p_1  中国の習近平国家主席が22日、国連総会一般討論でのビデオ演説で、2060年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指すと表明した(東京新聞 9/23)。

K10012631631_2009232150_2009232156_  国連のグテーレス事務総長は、「世界経済の脱炭素化を加速する必要がある」として、各国政府に対して、化石燃料を生産する産業に対する補助金をやめて、貧しい人々の雇用創出に資金を充てるよう呼びかけました(NHK 9/25)。

 世界の主要国の排出量は、2017年時点で二酸化炭素に換算して約328億トンに達しています。1位が中国の28.2%、アメリカ14.5%、インド6.6%、ロシア4.7%、そして5位が日本の3.4%です。

Chart03_01_img01_1  二酸化炭素排出量世界5位の日本は、今月3日に環境対策の国際会議を開催しました。国連のグテーレス事務総長はその会議へのビデオメッセージで、今世紀中の地球の温度上昇を1.5度以内に抑えるには世界の温室効果ガスの排出量を2030年までに半分に減らし、2050年までにゼロにする必要があると改めて強調しました。そして、「目標の達成は可能だがめどは立っていない」として、温暖化対策の現状に厳しい認識をしました」、「合わせて7100万人が暮らす151の地方自治体が、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする目標を支持している」と述べ、国内での温暖化対策の意識の高まりに期待を示しました。そのうえで、「海外の石炭火力発電所への融資をやめ、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることや、石炭の使用を段階的に減らして早期にやめるとともに、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やすことを心から期待している」と述べ、日本政府が主導して温室効果ガスのさらなる削減に取り組むよう求めました(NHK 9/4)。

146443f58e921e6178dc2ffe3936b43b1  日本は、菅総理大臣の国連総会へのオンライン演説では、これらの問題について一切触れませんでした。日本は2030年に2013年度比26%の削減目標を掲げていますが、1990年比ではわずか18%にしか過ぎず、消極的であると受け止めざるを得ません。さらにこの目標には原子力発電や化石燃料による発電が含まれています。

 そのような中、「2050年までにCO²排出ゼロ」を宣言する自治体も増えてきました(今日現在、26自治体)。実家のある神奈川県相模原市では政令指定都市として初の気候非常事態宣言を表明しました。

D2353567de9533be61864bd4fd158a60  私たちは、15年間木を植えることを通じて、ほんの僅かかもしれませんが地球温暖化にブレーキをかけてきました。しかし、それだけでは追い付かないほどのスピードで、日本で世界で生物の生存を危ぶむ異常気象が常態化しています。今後も森づくり活動を継続しながら、地球温暖化にブレーキをかけていくとともに、培った心を磨き上げ、各地域で志を同じくするすべての人々と連携を図り、政治にも訴えていかなければならない。

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(東京事務所・小林敬)

2020年9月20日 (日)

自然薯の恵みを共有できる喜びを味わいたい

 今の夏も酷暑で農作物生産に影響が出て、一部野菜が高騰した。我が家の柿も落ち始めている。大雨被害が遭った地方では肥沃な土がダメージを受け、住宅の不安や森が衰弱している。

202009  毎年梅雨があるように、大雨や暴風が毎年大暴れしている。人や生きものたちの命を育む営みのリズムが狂ってきていると思う。今までの暮らしのリズムといった日本人の当たり前の四季が変化している。 

202009_2  私の若い頃は、晩秋の訪れを楽しみにしていた。葉が枯れて落ちないうちに、その弦に目印をつけていたのが自然薯。今頃の時季は、枯れた弦に付いている「ハナタカメン」を探し、それに唾を付けて鼻の上に乗せて遊んでいた。弦に、ムカゴが付いているとラッキーで、家で美味しくいただいた。 

Dscn3523  乾いた土が好む自然薯だから、雨水が溜まらない所の自然薯を探していた。古希を過ぎて、実家付近で自然薯探してみたいと思っているが、想定外の異常気象で自然薯か好む土壌が心配だ。

20200921  コロナウイルスに負けない免疫力を付けていくためにも良いのではないかと、自然薯の恵みを頂きたいと思っているが、自然界のしっぺ返しは半端ではない。数年かけて食べ頃に生長し、私たちの免疫力を恵んでくる自然薯。その生長の土台を壊している人間の暮らしと経済活動。自然薯の恵みを継続していくためには、周囲の森を元気にしていくことを考え、できることを実行していきたい。

Photo  貴重となった自然の恵みを掘ることができたら、仲間たちとその恵みに感謝したい。(森びとAD・松井富夫)

2020年9月11日 (金)

「公害の原点」を「未来の財産」へ。源流の森を育てよう!

 渡良瀬川下流、かつて田中正造が鉱毒被害民と共にたたかった“谷中村”のある渡良瀬遊水地で、5月末にコウノトリが二羽誕生しました。ヨシ原の広がる湿地帯にエサとなるドジョウやカエル、小魚、ミミズなどが増え、生態系が回復してきていることがわかります。8月には巣立ちが確認され、遊水地内や付近の田んぼで生活を送っており、あと1カ月ほどで親の元を離れ飛び立っていくといいます。

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 谷中村民の暮らした場所には、大きく生長した桑の木が生え、実生も多く生えています。当会が2016年に開催した「足尾・ふるさとの森づくり」に渡良瀬遊水地のある野木町の「野木町煉瓦窯を愛する会」の皆さんが参加。会の皆さんが育てた桑の幼木を、養蚕が盛んだった旧松木村・「民集の杜」に植樹してくれました。

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 現在、大きなものは2mほどに成長し、6月には桑の実を付けました。「民集の杜」内では入口付近の桑の木に実が鈴なりとなり、熊が食事に来ていました。

 

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 一度壊した自然を取り戻すには、多くの人間の努力が必要です。緑(木々)が増えるにつれそこで暮らす虫や動物、風などが加勢してくれることを15年の森づくりで学んできました。渡良瀬川源流部と下流の自然が少しずつ回復していますが、気候変動はその回復のスピードを超えて進行しています。

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 9月9日、環境省の有識者会議は地球温暖化に対する「評価報告書」をまとめました。

コメの収穫量やマグロの漁場に変化が生じ、豪雨で物流や製造業の被害も増大するなど、評価した70項目のうち7割程に「特に重大な影響」が及ぶと予測し、政府に強化対策を求めています。台風の勢力増大などによる河川の氾濫や、高潮による浸水リスクが高まると分析。損害保険金の支出が膨らみ、商業施設や工場の休業、サプライスチェーン(調達・供給網)の寸断による損失が増える恐れを指摘。熱中症の死者や救急搬送はさらに悪化すると予測。今世紀末には東京と大阪で「日中に屋外で働ける時間が今より30~40%短くなる」と見積もっています。

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 コロナ後の世に「経済回復」を急ぐあまり、温室効果ガス排出が増大しては本末転倒です。

9月4日(1913年)は田中正造翁の命日でした。「公害の原点」と呼ばれた足尾の荒廃地を「未来の財産」とするために、1本でも多くの木を植えよう。

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(筆者 清水 卓)