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2019年5月

2019年5月23日 (木)

気付いた人から声をあげるということ

先日、世界132カ国の政府が参加する「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)が「人類によって「動植物100万種が絶滅危機」にさらされている」という報告書を発表した。どうやら私たちは大量絶滅時代を生きているらしい。

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生物はそれだけで独立して生きているものはなく、みなつながりを持って生きている、ということは、今ではほとんどの人が知っている事実だ。ある種の生き物が滅びると、当然その生き物に関係する生物にもしわ寄せがいく。滅びた生物が唯一の食べ物であれば一緒に滅ぶしかない。動植物の25%が絶滅する危険性があるというのだから、ほぼすべての種に影響があると考えて間違いないだろう。そしてそのつながりの中にもちろん私たちもいる。

それなのに、である。この衝撃的な事実が伝えられても、世界は相変わらず我利我利な話題で埋め尽くされていて、真剣にこの問題に立ち向かおうというリーダーも見当たらない。本当に、人類、大丈夫なんだろうか。と、自分事ながら他人事のようにつぶやいてしまう。

令和からさかのぼること数世代、明治の時代に石川啄木が書いた「林中の譚」の中で、彼は猿に次のような言葉を言わせている。

汝等はつねに森林を倒し、山を削り、河を埋めて、汝等の平坦なる道路を作らむとす。しかれどもその道は真と美の境―乃(すなわ)ち汝等の所謂(いわゆる)天に達するの道にあらずして、地獄の門に至るの道なるを知らざるか。汝等既に祖先を忘れ、自然に背(そむ)けり。噫(ああ)、人間ほど此(この)世に呪はるべきものはあらず。

(人間はいつの時代にも木を倒し、山を削り、川を埋めて、平らな道路を作って来た。だが、その道は天国に通ずる道ではなくて、地獄の門に行く道なのだ。人間はすでに祖先を忘れ、自然にそむいている。ああ、人間ほどこの世にのろわれるものはないだろう。 現代語訳「サルと人と森」から)

あの時代から私たちはさらにその道をまっすぐに歩んできたように思える。変わったことといえば、100万種もの動植物を滅ぼすだろうという事実を明確に予測できるようになった、くらいなのかもしれない。

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先の報告書を伝える記事では、抜本的なライフスタイルの変革が求められているとして、いくつかの提案が書かれていた。突き詰めると結局のところ、ひとりひとりがもっともっと自然と生活と自分を大切に、丁寧に生きていく。ちゃんとした政治家を選ぶ、ということらしい。そうして大きなうねりをつくって新しい世界を開くしかないようだ。

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翻って自分、こんな文章を書いている自分はいったいどうなのか。人に指摘できるほどの生活をしているのか。できることすらしていないのではないか。滅び行く多くの生き物から鋭く問われている、そんな居心地の悪さを感じさせる今回の記事であった。気候変動はもちろんだが、森をはじめとする生命基盤への保全についてもよく学びそして気付いたことに声をあげていかねばならない(事務局 小黒 伸也)。

参照記事:

2019年5月 3日 (金)

草木は人間にパワーを与える。ブナ保護活動を通じて気候変動・温暖化への危機感を共有。企業、行政、市民が手を取り合おう!

5月1日、元号が「平成」から「令和」へと改元されました。森びとの一員として、人間のいのちと自然環境を守る心を育むために、森と共に生きる時代へと歩を進めていきたいと思います。

働くものにとっての5月1日は、133年前の1886年米国シカゴで労働者が1日8時間労働を求めゼネラルストライキを起こしたことに由来する“メーデー”です。
筆者も現役の労働者として地元栃木県の地区メーデーに参加をしました。最近は、ゴールデンウイークの最初の土曜に開催されることが多くなりました。今年は4月27日でした。労働者の地位や労働条件向上、民主主義の発展を目指したメーデーは、多くの労働者とその家族が参加するため、広い公園で開催されています。木々に囲まれた公園内は各労働組合ののぼり旗がはためき、芝生の上では小さな子供たちが元気に走り周っています。緑の下で自然と体が動くのは草木のパワーをもらっているからでしょうか。

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栃木県内初のメーデーは1921年(大正10年)に銅山の町・足尾で開催されました。鉱山労働者が集まり要求実現に向け気勢を上げていたことでしょう。明治期の富国強兵・殖産興業政策で飛躍的な発展を遂げ、日本の経済発展を支えた足尾銅山。ふもとの労働者のたたかいや活況の銅山の様子、山火事や煙害によって森が失われていく様子を中倉山の頂上から見続けた“ブナ”に4月29日会いに行ってきました。

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森びとプロジェクト委員会「春の感謝デー」、3回目となる恩送り事業です。ブナ北側斜面の土壌崩壊により、木々にとって一番重要な根端が地表に露出しています。根を守ろうと、1昨年は根を踏んでいた登山ルートを林野庁の指導や登山者の理解を得ながら少し迂回するルートへと変更をさせていただき、昨年は、土壌の流出を止めようと土留めをつくり黒土を入れました。しかし、雨によって黒土が流出してしまいました。今年は草の種の入った土のう袋に土を入れ、崩壊地に張り付けました。ふもとから10ℓの培養土15袋と土のう袋30枚を担ぎ上げ保護作業を行いましたが、全体から見るとほんの一部分です。

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北斜面の土壌崩壊はさらに進んでいるようです。参加した皆さん一同「何とかしなければ」と“ブナ”を通して気候変動・温暖化に対する危機感を共有しました。人類生存の危機としてとらえ、すべての人々の未来のために、企業、行政、市民が手を取り合い“ブナ保護”を通じて環境問題への関心を高め、温暖化ガス吸収源の森や海を元気にしていきましょう。

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「百聞は一見にしかず」、森びとと一緒に土を背負い、ブナに会いに行きませんか。

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(事務局長・清水 卓)