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2013年9月18日 (水)

私たちは自然界の一員にすぎない

 発酵学者・東京農大名誉教授・農学博士の小泉武夫さんは福島県小野町生まれ。東京電力福島第一原発からほぼ40㌔圏内。どんな所なのかは、絵本『土の話』(小泉さん著・石風社)に紹介している。その一部では、「・・・俺は、海を見ながら暮らしてきた土だ。眺めは良いし、空気も水も美味く、お天道さまもまぶしかった。俺ばっかりでなくて、まわりの生き物もみんなうきうきして機嫌よく暮らしていた」、という趣旨を書いていました。さらに、フクシマ原発事故に関しては、「そんな山菜をつむ楽しみも、魚を釣る楽しみも一瞬にして奪われた」と、小泉さんは述べていました。

微生物に生かされている人間

小泉さんは、「豊かさの根源は土にあり」ということをこの絵本で訴えたています。「人間も動物も虫も樹木もコケもシダも、みんな土の恵みで生きている。その土は微生物の固まり。肥沃な土1㌘には何十億個もの微生物がいる。枯れ草を土に変えるのはもちろん、放射性物質を吸収してくれたり、放射性物質の半減期を早めてくれたりもする。そんな研究がどんどん進んでいる。・・微生物が地球を輪廻転生してくれるんですから」と、人間が自然の恵みで生かされていることも述べています。

P9021466 ミネラルたっぷりの日本の食文化は最高

 さらに小泉さんは、「牛乳を飲んでおなかがゴロゴロしませんか。あれは胃腸が弱いからではありません。日本にホルスタインが輸入されて、牛乳を飲むようになって時間が経っていないから、日本人は乳糖を分解する酵素の働きが十分でないだけなんです。どんな民族にも長く口にしてきた食べ物があり、じわじわと体が適応していく。それが民族の遺伝子です。戦後、アメリカ人が、野菜と魚中心の食生活を見て、そんなものを食べてはだめだとばかりに食生活の改善をつきつけた、その名残が続いている。

和食は米などの穀物、ゴボウやダイコンなどの根茎、白菜、小松菜などの菜っ葉、キュウリやトマトなどの青果、そして大豆、海藻、魚・・・。どれもミネラルをたっぷり吸い込んだ優秀な食べ物です。興奮してアドレナリンが異常に出たらミネラルが抑える。そのミネラル不足になれば、キレルのは当たり前です。この60年間でざっと肉の消費量は3倍、油は4倍になったのに、ミネラルの摂取量は四分の一にまで減ったんです」と、日本文化の素晴らしさを紹介しています。(4月13日・『毎日新聞』)

P9211530 被災地で動き出している食物連鎖

13日、福島県南相馬市の被災地を見てきた。海岸から陸側へ向かって数百㍍の田んぼにはシラサギが土をついばみ、トンビがネズミを捕まえていたし、ハヤブサが田んぼを旋回していた。また、田んぼには葦やガマノオが沢山生えていた。この様子を見て、私は微生物や菌が一生懸命働いて生物社会を築いていると思った。この生物社会が豊かにならないと本物の復興はできないとも思った。

台風18号が上陸して痛ましい爪跡を残していった。被災した方々にお見舞い申し上げます。ところでこの台風は、高かった海水温を攪乱して温度を下げてくれたかもしれない。また、豪雨が多くのミネラルを含んだ水を運んでくれたかもしれない。涌井史郎さんは、先人は「いさめる知恵」があり、「自然を詠み取る力を文化にして」と、言っていた。森と生きる暮らしから自然の脅威を考えると、豪雨や強風から身を守るのにもその防御策は現代と違ってくるような気がします。

私たちは、「自然には礼を尽くし、自然と共存できる道筋を立てなければならない」(西田敏行さん)、という時代の幕を私たちが開け、そのようなライフスタイルで生きていくことが一番の幸せではないかとおもいました。

(理事・高橋佳夫)

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