« 2018年7月 | メイン | 2018年10月 »

2018年9月

2018年9月27日 (木)

空っ風から家を守る先人の知恵

 秋の紅葉の終わりを迎え、丹色の空の夕暮れが見られるようになるともうすぐ冬が来ると感じます。(写真下)冬になると私が住む群馬では空っ風が吹きます。上毛かるたという郷土のカルタで「雷と空っ風義理人情」と詠まれるように上州人の性格を形作ってきたひとつだと思います。

1  私の住む地域では、空っ風のひとつである浅間山から吹き降ろす「浅間おろし」と呼ばれ、冷たく乾いた風が吹きます。また、「赤城おろし」と呼ばれる風は赤城山のふもとの県央あたりで吹きます。風の強さを分かり易く言えば自転車をこいでも前に進まなくなるぐらいで、時には看板も飛ばすくらいです。その一方で空っ風はものを乾かすという文化をつくり群馬の生活を形作った自然の恵みだと思います。

2              浅間山

 自宅の地域では「樫ぐね」という、この風から屋敷を守るための樹木の垣根が多くみられます。(写真下)高さは家とほぼ同じかそれよりも高く、屋敷をぐるりと一周します。ようするに「防風林」「屋敷林」です。

Photo  「樫ぐね」の「樫」は樫の木のことで「ぐね」は垣根のことです。この言葉は群馬の方言だと言われています。現存し整備された「樫ぐね」は立派でその機能を発揮していると思います。

Photo_3  「樫ぐね」は高さが家と同じ位で、幅も敷地と同じ長さなので手入れが大変です。高齢化がすすむと個人で手入れをするのは難しく大変です。私の家にも「樫ぐね」がありますが、手入れをしやすい高さに伐ってしまいました。(写真上)それでも樫は生長するのでその時期になると手入れをしなければならないので大変さは変わりません。最近では「樫ぐね」のある家が減ってきたと思います。家造り進化や宅地化で、一軒家は少なくなり、隣との距離が短くなってきました。

5  「樫ぐね」のある風景や家を残していくことは社会の変化に伴い難しいと思います。しかし、現代では、風だけでなく、葉の蒸散による気温調整、命に欠かせない二酸化炭素吸収という視点から「樫ぐね」の存在を考えると、その役割は大切ではないかと思います。手間はかかりますが「樫ぐね」を残すことによって先人の知恵を後世へ、現代人の知恵を後世につなげていけると思います。そんなことを考えながら、間もなく“空っ風”と向き合う季節を迎えます。(事務局員 岡部浩之)