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2014年12月

2014年12月 9日 (火)

森に寄り添って生きるために努力と経験をしてきた先人の知恵

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 足尾松木沢の山々は深い眠りに入っている。早いもので今年も間もなく冬至(22日)を迎える。いつもの自然界の移り変わりであるが、四国の徳島県山間部の皆さんは、その移り変わりを「初めての雪害」として経験している。

 集落へ通じる道路がストップしても、停電が続いていても山間部の高齢者の皆さんの暮らし振りはニュースで観る限り落ち着いて見える。むしろ余裕がみられ、そこには自然界や人間(地域)社会の掟を生きる知恵として身に着けていることが垣間見える。

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 がんじがらめの規律や法律でなく、それは自然の摂理や地域社会の人間同士の決まりごとである。この掟を破ろうとすれば、“バチが当たる”と小さい頃に言われたものだ。この掟に律せられて私たちは自然界の恵みに寄り添うことができ、地域社会から支えられて生きていける。

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 それにしても毎年振り返ると、想定外の異常気象、それによる犠牲と災害が世界各国で増えていることが心配だ。要因は海水温の上昇による偏西風の蛇行による、と言われているが、原因は自然界の掟を無視した人間の活動結果である、と言わざるを得ない。

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 宮脇昭先生は、「自然界が発している微か(かすか)な情報、現場で発している微かな情報から、見えない全体をどう読み取って、どう問題が起きる前に対応するか。これが人間の叡智であり、感性である」と述べている。(松崎明対論集『バチが当たる』・創出版)

 また、故・松崎明氏は、「洞察とか予見というのはある種の感性だとわたしは思うのですけれども、感性と言うのはやっぱり経験と努力によって磨かれるもので、実践なしには感性などというものは絶対に磨かれない。やっぱり実践もある種の理論的な基礎づけと言うか智慧というものを取得しないと、実践というのは生きないのです。」と述べている。

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 世界各国で猛威を振るっている異常気象という見えにくい自然界を読み取っていかなくてはならない私たちですが、森(自然)の恵みに寄り添って森と生きる努力と経験をしてきた先人たちの知恵を現代に活かしていくことによって、その洞察や予見が、そして問題が起きる前の対応が見えてくる。人間社会に“バチが当たらない”ようにしていくためには、生物社会の掟をこれ以上ないがしろにさせてはならない。

 蝋燭の炎で雪害を乗り越えている徳島県山間部の高齢者からはこんなことが発信されているのではないか。(理事 高橋佳夫)