笛太鼓を鳴らして、健やかな成長と平和な暮らしを願う“ひな祭り”
来月3日は女の子の節句「ひな祭り」。雨水を過ぎた今月、娘二人の雛人形を箱から出して飾り付けた。祖父母が孫のためにと贈ってくれた三段飾りの雛人形。男雛、女雛、三人官女を箱から取り出すときは、我が子のような気持ちになる。娘たちが小さい頃は一緒に飾りつけをしたが、ここ数年は親の仕事になってしまっている。本当は小さい頃の様に親子で飾りつけたいのだが。
雛人形の原形は、人形(ひとがた)に自分の厄や災いを移して、川や海に流した「流しびな」と言われている。女の子の健やかな成長を祈る節句の年中行事となったのは江戸時代という。
ひな壇には、ひなあられや白酒、菱餅も供える。三色の菱餅は、下から緑、白、桃色の順に重ねて置く。緑は“よもぎ”、白は“菱の実”、桃色は“クチナシ”の色と言われている。これらの植物には邪気払いや健やかに成長するに相応しい薬草のような効用があるらしい。そうなると、菱餅ひとつとっても子の健やかな成長を願う気持ちが込められていることが分かる。平安時代から現代まで植物は人間の心と身体を、つまり命を支えてきたのだ、と言える。
ひな壇を見て「ありがとう」と言ってくれた娘たちには、今後の成長を想い、親の願いを伝えたい。森に生かされている冷厳な事実と5年前に発生した東日本大震災・フクシマ原発事故によって何十万人もの被災者が故郷に帰れないことを話したい。2年後、長女は選挙権を持つ。自分たちの未来を築くうえで大切な事を見極める目と心をもった大人になってほしい。
健やかな成長や平和で安全な暮らしは雛人形等に託しても非現実的だ。一部の企業や政治家、それに荷担する一部労組によって、原発再稼働・原発回帰の潮流がつくられ、また、民意を無視して憲法改悪・戦争ができる政策が暴走している。さらに、経済成長第一の社会は、今世紀末に「生存が不安定」な時代を迎えようとさえしている。
でも、原発に頼らない市民運動や戦争政策に反対する市民や労組の運動によって、その暴走にブレーキをかけていることも事実である。また、武器も持つことなく、電力をも自由に選べる暮らしができようとしている。さらに、森と海の力は、人間が努力すれば地球温暖化防止に加勢するために警鐘を鳴らしている。この「人間と自然の力」を信じて、世の中の「鬼」退治に決起しなければ平和で安全な暮らしは実現しない。
新緑は生命の息吹を与えてくれる。3月27日には「南相馬市鎮魂復興市民植樹祭」が開催される。その後、4月16日には同市で「ストップ!地球温暖化 原発に頼らない森と生きる暮らしを考える市民フォーラム」(仮称)を開催予定だ。五人囃子の様に笛太鼓を鳴らして、平和な世と春の訪れを楽しもうではありませんか。
(東京事務所 清水 卓)
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