地域に伝わる“自然への畏敬の念”行事を次代へとつないでいきたい
12月までまだ2カ月ありますが西上州で12月に行なわれる屋敷祭りについて先人の感謝の気持ちなどを連綿とつないでいきたいと思っています。と言っても記憶違いなどありますが、地域に伝わる文化を知ってもらう端緒としてご容赦願います。
私の住んでいる地域では12月、屋敷祭りを行っています。行われていない地域もありますし、開催日が違う場合もあります。筆者宅では、六曜、曜日にこだわらず12月15日に行なっています。最近では家の敷地内にお稲荷さんのお社を建てるうちは少なくなったと聞いています。お稲荷さん(土地神様)への感謝の祭りが屋敷祭りです。屋敷祭りは地域としての祭りでなく、各家で行ないます。
前段の準備は縄を結うこととオンベロベット(御幣とほぼ同じ)を作ります。これをお稲荷さんのお社のそばに竹と縄で仮社を作ります。お社にはしめ縄を飾り、オンベロべットをしめ縄に挟み、竹にさしたオンベロベットを供えます。当家では縄を結うことができませんし、仮社は作らなくなりました。
当日は日が暮れた頃、北西にあるお稲荷さんに重箱に詰めた赤飯と尾頭付きの鰯を供え、おてのこぼう(ご飯やおかずを手のひらで食べること)で一口赤飯を食べ、お社を振り返らずに家に戻ります。幼い頃から「お稲荷さんが食べている様子は見るな!」と言われています。家族ではけんちん汁を食べながら、お稲荷さんが食べてくれるか等の話しがされました。翌日、お供え物を食べた跡があれば家族の気持ちがお稲荷さんに通じ、跡がなければやり直しです。そして、家庭ではけんちん汁を食べます。
幼い頃からの屋敷祭りですが、12月になると頭に浮かんでくる祭りです。森づくりに参画している筆者は、当家で続けられているこの祭りを絶やしてはならない気持ちでいます。何故なら、森(自然)に生かされている人々からすれば、住を守り、農作物(食)を恵んでくれたお稲荷さん(土地神様)への感謝、そして無事に一年間この地で暮らしてこられたことへの感謝の現れだと思っているからです。自然(森)への畏敬の念がこうした「屋敷祭り」として、活字だけではなく暮らしの中の「祭り」という知恵は大切ではないかと思います。できる限りわたしも引き継いでいきたいです。(事務局 岡部浩之)
最近のコメント