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2017年10月

2017年10月26日 (木)

地域に伝わる“自然への畏敬の念”行事を次代へとつないでいきたい

 12月までまだ2カ月ありますが西上州で12月に行なわれる屋敷祭りについて先人の感謝の気持ちなどを連綿とつないでいきたいと思っています。と言っても記憶違いなどありますが、地域に伝わる文化を知ってもらう端緒としてご容赦願います。

Photo  私の住んでいる地域では12月、屋敷祭りを行っています。行われていない地域もありますし、開催日が違う場合もあります。筆者宅では、六曜、曜日にこだわらず12月15日に行なっています。最近では家の敷地内にお稲荷さんのお社を建てるうちは少なくなったと聞いています。お稲荷さん(土地神様)への感謝の祭りが屋敷祭りです。屋敷祭りは地域としての祭りでなく、各家で行ないます。

Photo_2  前段の準備は縄を結うこととオンベロベット(御幣とほぼ同じ)を作ります。これをお稲荷さんのお社のそばに竹と縄で仮社を作ります。お社にはしめ縄を飾り、オンベロべットをしめ縄に挟み、竹にさしたオンベロベットを供えます。当家では縄を結うことができませんし、仮社は作らなくなりました。

Photo_3  当日は日が暮れた頃、北西にあるお稲荷さんに重箱に詰めた赤飯と尾頭付きの鰯を供え、おてのこぼう(ご飯やおかずを手のひらで食べること)で一口赤飯を食べ、お社を振り返らずに家に戻ります。幼い頃から「お稲荷さんが食べている様子は見るな!」と言われています。家族ではけんちん汁を食べながら、お稲荷さんが食べてくれるか等の話しがされました。翌日、お供え物を食べた跡があれば家族の気持ちがお稲荷さんに通じ、跡がなければやり直しです。そして、家庭ではけんちん汁を食べます。

Photo_4  幼い頃からの屋敷祭りですが、12月になると頭に浮かんでくる祭りです。森づくりに参画している筆者は、当家で続けられているこの祭りを絶やしてはならない気持ちでいます。何故なら、森(自然)に生かされている人々からすれば、住を守り、農作物(食)を恵んでくれたお稲荷さん(土地神様)への感謝、そして無事に一年間この地で暮らしてこられたことへの感謝の現れだと思っているからです。自然(森)への畏敬の念がこうした「屋敷祭り」として、活字だけではなく暮らしの中の「祭り」という知恵は大切ではないかと思います。できる限りわたしも引き継いでいきたいです。(事務局 岡部浩之)

2017年10月16日 (月)

森の恵みを現代の暮らしに活かす時代がやってきた

 9月下旬、リハビリを兼ねて能登半島を旅した。天空の旅への誘いがいつ来ても悔いのない終活であるようにと、二人で出かけた。できれば森と生きてきた先人の知恵を改めて学びたいと願って北陸の集落を探索した。

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Photo_2 上写真:ケンポナシ

 合掌造りの集落を歩いているとウダイカンバの葉に似た木が種を付けていたので、葉と実を見ていると通りかかった地元の人から声がかかった。「ここではその木は“テンボウナシ”と言うのだよ!」と教えられた。話を聞いていると、この実は熟すと甘く、集落の人たちは食べていたという。国民宿舎の部屋で調べてみると、その木は「ケンポナシ」という。実は食べられて、酒を飲む前に食べると酒に酔わないというらしい。

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Photo_4  塩田では、昔から伝えられている塩づくりを見た。海水を砂地に撒いて、その砂を熱してろ過し、乾かして塩をつくっているが、塩田の脇には薪が積まれていた。薪は海辺の家の後ろの森を育て、冬になると薪づくりが始まるという。

Photo_5  ろ過は藁で編んだむしろが使われている。現代では化学繊維でろ過されるが、むしろにこだわっている。理由は訊けなかったが、二人は“納豆作りでも藁の力を借りるが、塩も多分そうではないか”とおもった。

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640x480_2  合掌造りでは土台材はクリの木が使われていた。100年以上前に建てられた豪雪地帯の家の造りだが、全ての材が草木だ。柱などの防虫には囲炉裏で薪を燃やし、その煙が虫を寄せ付けないと同時に、二階の部屋の暖にもなっている。

640x576  マンションやビル、新幹線の高架橋、首都高速道路等のコンクリート製建造物の寿命は何年だろう。ニュースでは東海道新幹線、首都高速道路の建て替え工事が報じられている。いずれも東京オリンピック時代に造られた物だから、その寿命は50年程ではないか。

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Photo_6  森の恵みを現代の暮らしに活かしていくことの有難さを改めて実感した旅だった。(理事 高橋佳夫)