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2020年7月

2020年7月30日 (木)

森びととしての「グリーンリカバリー」を今後も進める

 古代中国で考案された季節を表す方式の七十二候によると、7月28日~8月1日頃を土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)と言うそうです。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、マスクをすることが、あたりまえになり、不快な日々、不安や恐怖を感じて日々生活をしているのではないでしょうか。とかく滅入りがちですが、「うつらない・うつさない」よう予防をしながら、日々を過ごしていきたいものです。

20200729_160744_2 先日、当会顧問の山崎誠衆議院議員が、日経新聞のインタビューとして再生可能エネルギーについて、コロナ後の社会をどのように再興していくか、その際のエネルギー政策の重要性を訴えている記事が掲載されていました。世界ではコロナ禍からの復興をグリーン政策で実現しようという「グリーンリカバリー」という政策パッケージが提起されています。脱炭素社会の実現に向けた投資により経済の復興を実現、その柱になるのが再生可能エネルギーの利用拡大、再エネ100%を目指す動きです。日本も当然、この世界の潮流に乗っていかなければなりませんが、安倍政権はいまだに原発、化石燃料依存から抜け出そうとしていません。再エネを拡大するといっても目標設定が間違っているために投資も伸びず、結果として世界から大きな後れをとっている状況です。立憲民主党ほか野党が提出した原発ゼロ基本法では、明確に2030年に再エネの比率を40%以上、原発ゼロの方針を明記。さらに現在はCO2を大量に発生する石炭火力発電もゼロという目標を掲げて政策を取りまとめているそうですので、実現させていきたいものです。20200730_063210_2

 新型コロナウイルス感染拡大は、生態系の破壊や気候危機によるものが多いと思います。例えば、都市中心の社会、行き過ぎた新自由主義による格差拡大、大量生産・大量流通に依存していることが挙げられます。中央集権的なシステムから地域分散型のシステムへの転換が必要だということです。私たちは特効薬がない中、新型コロナウイルスもそうですが、未知の感染症と共存していくしかならず、頻繁に甚大な自然災害が襲うことも考えられます。まさに、日本も世界も大きな歴史の転換点(パラダイムシフト)にいると言わざるを得ません。

Pb110161_2 私たち森びとの「グリーンリカバリー」は、まさに森づくりであり、全ての生き物の生存を危ぶむ地球温暖化にブレーキをかけるために、今後も愚直に森づくり運動を進めていきます。

20190723_193101_2(東京事務所・小林敬)

2020年7月18日 (土)

生きものたちの命を育む地球を元気にしたい

 私が住んでいる府中市の西府には東京名湧水57選のひとつがある。府中崖線にある貴重な湧水の水量は少ないが、枯渇していない。東京都は、都市化の影響などで枯渇や水質悪化が進んでいる中で、武蔵野台地の末端部にある崖線沿いや多摩丘陵の谷戸等の湧水は貴重な湧水としている。調査活動をしているNPOの役員によると「沸かして飲めば災害時などの飲料水として使用することが出来る」と述べている。森の恵みで育った私は、水を買って飲む時代が来るとは思っていなかった。今は私も水を買って飲んでいるが、時々、足尾の森作業にスタッフが持参する沢水を頂くと、幼い頃の美味しい水の味を思い出す。 

Dscn2802 写真:みどり市・大木さん

「令和2年豪雨」(7月~)は九州地方をはじめ各地で甚大な豪雨災害をもたらした。大切な水が地球温暖化の影響で暖められ、線状降水帯となって豪雨が襲い、尊い命や財産を奪っている。被災した皆さまにお見舞い申し上げます。今回の豪雨は東シナ海の海水温度が上昇し、大量の水蒸気が前線に流入し、記録的な降水量になった。運ばれた水蒸気を水に換算すると毎秒約40万立方㍍で、アマゾン川の約2倍に相当すると報じられている。水は生活に欠かせないものだが、記録的な豪雨は命や財産を奪う恐ろしい水に変身する。自然界からの警告として受け止めたい。

Dscn2034 写真:みどり市・大木さん

 人類が共有すべき天然資源(水)なのだが、日本の美味しい水を買い占める外国の資本が忍び寄っているらしい。何十年、何百年の時間をかけて育てたミネラル豊富な水は、森が作っている。森を護り、育てている日本人の“森に寄り添う文化”は金で独占されてはならないと思う。人間が自然界を支配できるという思い上がりを改め、森に寄り添って生きる社会へ舵を切らなければならない。

Dscn6053 写真:みどり市・大木さん

 新型コロナウイルス感染の猛威で思い知らされていることは、自国ファーストや経済優先ではなく、「生命第一」のための事業を、世界の人々が心をひとつにして連携していくことだと思う。私も、足尾でその情熱を燃やしていく。(森びとAD・松井富夫)

2020年7月10日 (金)

愛する家族のため、世界の人々のために、いのちを守る森づくりを!

 梅雨前線の停滞が長引き、九州地方や本州で豪雨被害が発生しています。
 気象庁は9日、活発な梅雨前線の停滞により北海道や沖縄を除く全国で少なくとも12日まで大雨が続く可能性があると発表しました。降り続く雨で各地の地盤が緩んでいるとして「次に大雨が降ればどこで災害が起きてもおかしくない」と警戒を促しています。
7月3日から9日午後5時までの総降水量は鹿児島、高知、和歌山各県で、1000m超、長野県で900mを超えるところがあるなど記録的な雨となっています。(7/10毎日新聞)

 この豪雨は川を増水させ氾濫。多くの住宅が水に浸かり、未明の増水によって犠牲者が多く発生しました。山の斜面の森や土壌は許容することのできる水量を超え、植林された樹木ごと土砂が崩れ落ち、山の麓の家屋に流入し住民が犠牲になっています。この痛ましい事態に胸が苦しくなります。被災された皆様にお見舞い申し上げると共に、犠牲となられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

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   【7月8日 毎日新聞】

 熊本県南部を襲った猛烈な雨は、九州を東西に横断するように停滞していた梅雨前線に、南西の東シナ海から暖かく湿った空気が流れ込み、西側の海上で積乱雲が発生。前線に沿って「線状降水帯」が形成されたことが原因だといいます。地球温暖化が進めば更に海水温が高くなり、豪雨災害のリスクが高まることは目に見えます。海水温の上昇は日本だけの問題ではなく、世界の問題です。

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   【7月8日 毎日新聞】

 二酸化炭素を大量に吸収し、地球温暖化の抑制に欠かせない存在として「地球の肺」と呼ばれる南米アマゾン川流域に熱帯雨林があり、その広さは550万平方キロにのぼります。  
 現在、そのアマゾンの森林破壊が加速しているといいます。「熱帯雨林の6割を占める南米ブラジルでは、新型コロナウイルス流行の影響で、環境保護当局の警戒が手薄になったすきを突いた違法な開発も加速しているとみられています。ボルソナロ大統領の環境軽視の姿勢が、違法な野焼きや森林伐採、鉱山開発などを助長しているとの指摘もあります。火災による消失も含め熱帯雨林の破壊は深刻さを増し、19年度の破壊面積は1万896平方キロに及び、過去11年間で最悪レベルに達した。」(6/28毎日新聞より)といいます。
 そして、昨年9月から今年1月に発生したオーストラリア火災では10万3千平方キロ(1/11時点、日本の国土面積の約4分の1以上の大きさに匹敵)にも及ぶ森林面積が消失しました。
 「自国ファースト」の結果は、自国民のみならず、世界の人々の生活を脅かせています。今こそ、地球温暖化ストップ!いのちの森づくりへ舵を切らなければなりません。

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 先日、小黒事務局次長からうれしいニュースが飛び込んできました。「ダボス会議」で知られる「世界経済フォーラム」の動画で、当会最高顧問の宮脇昭先生の森づくりが紹介されているということです。『気候変動の秘密兵器は小さな森づくり。宮脇の森は今ではヨーロッパ各地でも数多く作られているのだとか。世界に広がる森づくりの輪。日本の森づくりも負けちゃいられませんね。』と当会HP「森の風だより」で紹介させていただいておりますので、是非ご覧ください。

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 2004年宮脇先生と荒廃した栃木県・足尾銅山跡地の現場に立ち、「一番困難な場所で森づくりが出来れば世界のどこでも森づくりが出来る」と、「いのちを守る本物の森づくり」がはじまりました。40㎝ほどの幼木が現在では12mにも生長し、落石を防ぎ、降雨を葉で受け止め根で蓄え、水源涵養、土砂流出防備林として森の機能を発揮し、多様な生き物が暮らす森へと生長しています。

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 宮脇昭先生は著書『人類最後の日』の末尾に「今こそ、新しい科学、特に生態学的な自然観、知見をもとに、人類生存の母体としての緑—いのちの森―を足もとから、明日に向かって、共に学び、創って戴きたい。君のため、君の愛するご家族のため、日本人のため、七十億人を超えた世界の人々のために、本気で取り組む皆さんとともにいのちのある限り、私は続けます。」と記しています。

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 各県で活躍する森びとインストラクターの皆さん、森とものみなさん。自然災害を防ぎ、多くの人々の命を守るために、地球温暖化防止に向け、山と心に木を植えていきましょう。

理事・清水 卓