生きものたちの命を育む地球を元気にしたい
私が住んでいる府中市の西府には東京名湧水57選のひとつがある。府中崖線にある貴重な湧水の水量は少ないが、枯渇していない。東京都は、都市化の影響などで枯渇や水質悪化が進んでいる中で、武蔵野台地の末端部にある崖線沿いや多摩丘陵の谷戸等の湧水は貴重な湧水としている。調査活動をしているNPOの役員によると「沸かして飲めば災害時などの飲料水として使用することが出来る」と述べている。森の恵みで育った私は、水を買って飲む時代が来るとは思っていなかった。今は私も水を買って飲んでいるが、時々、足尾の森作業にスタッフが持参する沢水を頂くと、幼い頃の美味しい水の味を思い出す。
「令和2年豪雨」(7月~)は九州地方をはじめ各地で甚大な豪雨災害をもたらした。大切な水が地球温暖化の影響で暖められ、線状降水帯となって豪雨が襲い、尊い命や財産を奪っている。被災した皆さまにお見舞い申し上げます。今回の豪雨は東シナ海の海水温度が上昇し、大量の水蒸気が前線に流入し、記録的な降水量になった。運ばれた水蒸気を水に換算すると毎秒約40万立方㍍で、アマゾン川の約2倍に相当すると報じられている。水は生活に欠かせないものだが、記録的な豪雨は命や財産を奪う恐ろしい水に変身する。自然界からの警告として受け止めたい。
人類が共有すべき天然資源(水)なのだが、日本の美味しい水を買い占める外国の資本が忍び寄っているらしい。何十年、何百年の時間をかけて育てたミネラル豊富な水は、森が作っている。森を護り、育てている日本人の“森に寄り添う文化”は金で独占されてはならないと思う。人間が自然界を支配できるという思い上がりを改め、森に寄り添って生きる社会へ舵を切らなければならない。
新型コロナウイルス感染の猛威で思い知らされていることは、自国ファーストや経済優先ではなく、「生命第一」のための事業を、世界の人々が心をひとつにして連携していくことだと思う。私も、足尾でその情熱を燃やしていく。(森びとAD・松井富夫)
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