生存の不安定な時代を呼び込む「鬼」を退治
まもなく節分である。この時季になると“しもつかれ”を食べる、と言う話しを聞いたことがある。先月その機会があり、“しもつかれ”を初めて食べた。見た目は悪いが、身体に優しく、美味しくご馳走になった。
この時季、栃木県北では雪交じりの“那須がおろし”が吹く。幼い時は、この時季に豆蒔きをした。この大豆と室から取り出した野菜(大根、人参)をすり降ろし、油揚げと鮭の頭や骨を鍋に入れ、醤油と酒粕で味付けをしたのが“しもつかれ”だった。一晩ねかせたこの“しもつかれ”は、美味で栃木県の名物。聞くところによれば、古くは江戸時代から飢饉の時に飢えを凌ぐための食べ物で、「救荒食」として使われていたと言われている。
2月3日は節分。旧暦では2月4日は立春で新年の始まり。現在の1月1日(元旦)である。節分はその前日だから大晦日にあたり、昔から大事な節目の日として考えられてきた。節分には大豆を蒔くが、これは中国から伝わり、無病息災を祈る意味があるとう。日本は千年以上も前から、災いや病気は「鬼の仕業」とされ、季節の変わり目には「魔(鬼)がくる」と考えられてきた。
この時季は、寒さで身体の免疫力が低下し、風邪等をひきやすい。その魔(鬼)を払い清め、福の神を新しい年に迎え入れるため”節分”に豆(=魔滅)を蒔くようになった。大豆は「畑の肉」、たんぱく質が豊富、空気中の窒素を取れ入れる機能をもっているので痩せた土でも育つ。それを食べれば病気にも強くなると言われている。節分には、「鬼は外―、福は内―」と、無病息災の新年を迎える。
ところが大豆の多くは輸入品が圧倒的だ。日本の食糧海外依存度は60%以上だから、穀物が外国から日本に運びこまれる過程では、化石燃料が多量に燃焼され、二酸化炭素が排出されている。先人たちの「地産地消」と、無駄をなくした暮らしを現代社会に活かしていれば、どれだけ二酸化炭素排出を抑えられたことか。そんなことを節分前に考えさせられる。
さて、今年の節分ではどんな「鬼」を退治するか。原発再稼働を進める政府と企業、その上、石炭火力発電を増発する企業によって地球温暖化防止対策を本気にやらない鬼、民意を無視して戦争政策を強引に押し付ける鬼を退治しなければならないと思う。
来月3日は、日本産の大豆を買って、無病息災と平和で安心な暮らしを呼び込む「鬼」を心の中に向かい入れたい。(理事 大野昭彦)
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