「保護」するのは「国益」ではなく、生態系豊かな大地だ
大寒が過ぎ、厳冬を迎える足尾松木沢。今年は荒廃地が白くなるのが早い気がする。土の中は雪が積もっている方が温かいから、土壌動物や根には居心地がよいかもしれない。
昨年夏、新松木の杜で草刈りをしていたら、ネムノキとヤマナラシが元気に生きていた。この杜は2011年9月に植林したが、ムネノキ、ヤマナラシは植えなかった。樹高は1.5㍍程あった。多分、種が風や鳥たちによって運ばれてきたのだろう。当時植林したカエデやコナラ、カツラも歓迎しているようだった。松木川沿いに生えていたので、沢風が種を運んできたのだろう。獣害防止として柵が張ってあるが、風、鳥、猿たちには柵は壁になっていない。自然界は柵どころか壁もない。この生物社会の一員が私たちで、大切な命が育まれている。
トランプさんは大統領就任後の政策の一つに“国境に壁を造る”という。第193回通常国会の施政方針演説をした安倍首相も「壁」を連発した。共通していることは、経済成長のために一方では「壁」を造り、他方では「壁」を打ち破っていくという。また、共通していたこと?は、地球温暖化対策を撤廃するトランプさん、安倍さんは施政方針演説で地球温暖化対策を一言も触れなかったように、生物社会の一員でいることが分かっていないようだ。
「壁」の中では干ばつで農作物生産の先行きが悪くなる。さらに、毎年、巨大ハリケーンが何十万人が被災しているというのに、日本でも、毎年、局地的集中的が豪雨が暴れてライフラインや家などが壊されて暮らしが脅かされているというのに、その大きな要因が地球温暖化による海水温度上昇であるというのに、積極的な発言は両首脳からは聞くことはできなかった。命よりも「そろばん」(経済第一)が大事なようだ、と驚いた。
ヤマナラシは沢や森に風が吹き始めと葉と葉が擦れて音をだし、“風が吹いてくるよ!”と人や生き物たちに教えてくれる。時には恐ろしいウィルスが国境を越えてくるが、人間の支え合い、助け合いによって命は育まれている。生きていく基盤は大地と海そして森である。「保護」するのは「国益」ではなく、命を育む生態系豊かな大地ではないか。(理事・髙橋佳夫、写真:仁平範義)
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