身は隙間風に震えるが心の中には春が来る
首都圏に雨が降らない日は今日で1ケ月位になる。間もなく立春を迎えるというのに、地表に水分が薄くなり、生きものたちはどんなことで地表の乾燥をしのいでいるのか。
この時季、一週間ほど足尾で寝泊まりしていると、冷たく痛い寒風を防いでくれる草木の恵みにホッとする。というのは寝泊まりしている長屋は足尾銅山が操業していた当時の社宅。雨戸や窓は木製で、隙間から隙間へ寒風が通過する。深夜から早朝の部屋は冷たい。
隙間にはビニールハウスの余ったビニールを張っているが、それでも寒風は入り込んでくる。それを障子紙一枚が冷たい風を防いでくれる。身体は布団と“どてら”で包み、頭は毛糸の帽子で覆い、顔にはマスクを付けて寝る。障子、寝具の原料は全て草木や生きものからの恵みだ。それを先人たち様々な失敗を重ねて、人の命を育むために紙や綿そして毛糸を作ってくれたものである。
間もなく立春を迎える。日毎に陽が長く射している。これまた自然の恵みが有難い。厳寒地で暮らす人々の“春が待ち遠しい”という気持ちが分かるような気がする。布団の中で眠りにつく前には、松木の杜に咲くスイセンは昨年よりも早く冬の香りを届けてくれるのだろうかと思うようになっている。
春雪がカラカラした空気を湿らせ、和らげてくれると、スイセンの香りは一段と春を待つ心を歓ばしてくれるだろう。(理事 髙橋佳夫)
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