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2018年12月19日 (水)

クスノキのものがたり

 師走に入り、足尾は日に日に寒さを増し、木々はすっかり葉を落とし、雪も降り本格的な冬を迎えました。「遊働楽舎」(みちくさ)の前に植えてあるクスノキは、鹿なのか、猿なのか分かりませんが葉が食べられて枯れてしまった様子でした。松村宗雄スタッフは、枯れた木を抜いてしまおうと思って幹を見てみると、地表に芽が出てきていることに気づいたのが今年の春でした。

P6121709 Cimg8613  その芽は、その後も大きくなり育っていたので、枯れた原因を考えているとそれは獣害ではなく、寒さのせいで枯れたことが分かりました。

 そこでクスノキを調べてみると、クスノキは「樟」や「楠」と書き、「楠」という字は中国のタブノキを指す字で、常緑高木で南方方面に多く生息し、食用となる「アボカド」や「タブノキ」の仲間で、樹皮が香辛料となる「セイロンニッケイ(シナモン)」、「ゲッケイジュ」、「クロモジ」も同じ仲間のクスノキ科でたし。クスノキは、言わずと知れた「樟脳」の原料です。樟脳とは、クスノキの葉や枝などのチップを水蒸気蒸留して結晶となったもので、一般的には衣料の防虫剤として使用されていますが、血行促進や鎮痛作用・消炎作用があるためかゆみ止め、リップクリーム、湿布薬などの医薬品としても使われています。

 このようにクスノキは、私たち人間の暮らしに深く関係がある木なのですが、もうひとつテグスサン(天蚕糸蚕)という蛾の幼虫はクスノキ(樟)やヤナギ(柳)などの葉を食べ、絹糸腺からテグス糸を作りだすことから日本でも一部地域で飼育しているところがあるそうです。

Cimg8502  そんなクスノキが枯れたと思っていたところ、この夏を過ごして上の写真のように立派に茂り、2年目の冬を迎えました。昨年の二の舞にはさせないと、松村(宗)スタッフは防寒対策を考えていました。筆者は兼六公園でよく知られる雪吊りをイメージしていましたら、松村さんは「雪は問題ない。霜の方が怖い」と言っていました。新潟育ちの福原スタッフも「雪が降るとむしろ暖かい、雪が溶けてそれが寒さで凍ると木は枯れてしまう」と教えてくれました。そこで松村(宗)スタッフが考えたのは、藁で囲うことでした。

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Cimg8520  橋倉スタッフからは、「桐生駅前の街路樹にクスノキが植えてあるよ」との情報でしので、早速、桐生駅に行ってみました。北口の駅前に18本のクスノキが生えていました。

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P1020940  桐生は古くからの織物の町です。駅から徒歩で8分程の「織物会館」に行ってみました。ここでピンときたのは「樟脳」、防虫=樟脳ということなので桐生はその生産も盛んであったかもしれないと思いました。織物会館の案内人は、「へぇー、そうなんですか」と、逆に質問されました。クスノキ・樟脳と桐生の絹織物との関連、この話は謎のままです。

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Cimg8548  話は戻りますが、「みちくさ」のクスノキの防寒は写真のように、菰(こも)を巻いたようになりました。クスノキも松村宗さんの思いに応えてくれる気がしています。

P9243081  ところで「楠学問」という言葉があります。意味は、『クスノキは成長するのは遅いが大木になるところから、進歩は遅いが着実に成長し大成する学問。「梅の木学問」という言葉もありますが、こちらは早く成長するが大木にはならないことから、進み方は早いが学問を大成させないで終わるそうです。

 私もクスノキのあやかり、足尾の草木を着実に生長させ、毒害以前の森に蘇えるように努力していかなければと思います。(事務局・ 加賀春吾)

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