春の風が運ぶ桃源郷の叫びに応えて
福島県はフルーツ王国である。朝晩の温度差がおいしい果物を育てる。その中でも県北では桃が美味しい。桜が葉桜に変わる頃は桃の花が咲き誇る。摘花作業と枝の剪定の後は、ひと昔のようなあふれるピンク色には染まらないが桃源郷のような風景が見られ、暖かい春の風が香りを運んでくれる。
最速の桜の開花であった今年、桃も例年より1週間から2週間早く咲き、4月上旬には満開になった。そこに遅霜が襲い、10日~15日には気温が氷点下になり、花に霜が付き、実に生長する子房が凍り、枯れたとニュースで報じられた。
美味しい桃を食べれるのは、その土地に適応した様々な改良を重ねてきた先人の結晶。私の住む町周辺に広がる水田から美味しい米がいただけるのも先人が自然界と向き合ってきた営みである。今、桜や桃の最速の開花を見ると、先人の労苦と土が根底から覆されてしまうのではないかと感じている。その上、原発事故による放射能汚染、一昨年の台風による浸水、昨年は桃のモモせん孔細菌病等で桃は痛めつけられている。桃を見ていると、「もうここには住めない」と悲鳴をあげているようだ。
草木の恵みに支えられている私たちの生存ということを考えると、地域の農家の方々の気持ちと消費者の心をひとつにしなければならないと思う。地球温暖化問題は政治問題だが、それは私たちの課題でもあることを改めて実感している。
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