昭和30年代までの千葉・九十九里浜には、広く、熱い砂浜が広がっていました。海岸の水辺までたどり着くには何度も足の裏を冷やさなければ辿り着けなかった頃、海の人たちは一生懸命に生きていました。生活は楽ではなかったけれど、大人も子供も心は清らかで、海には豊かな幸があり、魚介類は驚くほど良く採れました。浜の女衆は漁船を砂浜から海に出す「オッペシ」という作業のために半裸で過酷な仕事に耐えました。男衆は素裸で漁に出ていきました。生きることに大人も子供たちも目が輝いていた時代です。
それから半世紀が過ぎました。海も魚介類も砂浜も生活も大きく変貌しています。九十九里浜は千葉県北東部の太平洋沿岸に沿って弧を描いた砂浜です。北東方向屏風岬(銚子市)から南西方向太東岬(いすみ市)まで約66キロに渡って続き、遠州灘に次ぐ規模を誇ります。この砂浜に今異変が起きていて、砂浜が急速に減少しています。
千葉県の気候変動対策(2018年)では、九十九里浜など21世紀末(2081~2100年)の砂浜面積が20世紀に比べて最大9割縮小する可能性があるとの推計を示しました。要因は、温暖化の影響で海水面の上昇が懸念されるとしています。
海面上昇の観測では1901年から2010年の110年間で19㎝も海面が上昇したと言われています。また、2013年に公開されたICPP第5次評価報告書では、今後2100年までに海面上昇は最低でも26㎝、最大で82㎝となると見積もられています。
海面が上がると海岸が「水没」します。台風や高潮の影響で「海岸浸食」が起きます。これは砂浜が削れていくことになります。1m海面が上昇すると海岸線は「水没」によって約20m後退しますが、「海岸浸食」によって全体で100mも後退します。実際、九十九里浜・白里海岸では1961年と比べ50年後の2015年では最大で90mも砂浜が消え、海岸線が後退したところがありました。
「子供のころ、砂浜はちょうど、あそこの白波がたっているあたりだ。昔は砂浜で野球をするなど、この浜辺は遊び場だった」と、森びとOB・斎藤さんがよく話していました。斎藤さんは地元で海岸松の復活に尽力し、10年前から仲間とともに黒松を植樹していました。その松は現在、東京2020オリンピックサーフィン競技会場の入口ゲート脇で元気に育っています。
先日、現地を訪れました。会場設営準備のため、現場は入場禁止となっていましたが、海岸部分は自由に入れました。また、多くのサーファーがオリンピック会場やその周辺で波乗りを楽しんでいました。少年サーファーも多くいました。
私は海を見ながら、「50年後にはこの海岸は無くなってしまうのか。いや30年後、少年が大人になり結婚し、子供と一緒にこの海岸に来れるのだろうか?」と思いました。波先に転がっているハマグリや足元のカニを見て、そう思わずにはいられませんでした。
「小さなことから、出来ることから」自分たちの住む千葉県の海岸線を守るため、千葉FCは地球温暖化防止に向けて活動したいと思います。千葉ファンクラブ 髙梨 厚
最近のコメント