森の機能が発揮されるふるさとの木による森を育てたい
府中の崖線で急傾斜地崩壊区域に指定されている森を歩いた。この地は、過去の洪水で立川崖線と国分寺崖線を古代多摩川が南へと流れを変えて行く過程で削り取られて出来た河岸段丘の崖で、線状に長く続く崖なので「崖線」と呼ばれている。 高さ約10㍍、傾斜30度以上ある崖には直根性のケヤキやヒノキ等が適度な間隔で植えられている。樹齢約200年は越えていると思う。キツネノカミソリやエゾエノキやアオキなどの低木と下草(クマワラビやヤマニンジンやコケ類)も生えている。この森は長い年月をかけて補植と手入れがされ、自然の力によって群落が形成され、崖崩れを防止している。 この崖線の森を見て、私が森づくりをしている「土砂流出防護保護林」の足尾・「臼沢の森」のことが頭に浮かんできた。幼木を植えて16年が経ち、樹高は10㍍超え、幹の太さは直径10cm以上の立派な木々となり、生態系が豊かになっていることを実感している。しかし、崖線と違うことは下草や低木種の生え方が少ないということ。 林野庁の紹介では、土砂流出を防ぐには林床を落ち葉や下草に覆われた状況に保つことが望ましいという。「臼沢の森」の地表は落ち葉で一部覆われているが、下草が豊富ではない。木々が密集しているから陽が当たらないことが影響しているのかと思う。同じ森内で陽が当たっている場所はススキやイネ科の植物が生えている。 世界中で、毎年巨大化している大雨や干ばつ等による災害という中で、県が指定している「土砂流出防護保護林」の足尾・「臼沢の森」。この視点から16年間の森づくりを振り返り、東京都内の森づくりに活かしていきたい。 (東京都・松井富夫)
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