森の再生と集まる生き物たちの未来
足尾は、木を植え続けて13年 “りっぱ”な森ができつつある。ふるさとの森をつくることは、同時に生態系の土台をつくることでもある。例えば、木が育ちその葉に虫がつく、その虫を食べるカマキリなどの肉食の虫が出てきて、その虫を食べる鳥や動物たちが集まってくることなど、食物連鎖の底辺ができることもでもある。 植えていないヤマナラシや白膠木(ヌルデ)などの木々が植樹した樹々の間に生えているのは、森にくる鳥などがその種を運んできたのでは。今まで見られた草(いわゆる雑草)は、木が生長するにつれて、森の中では見られなくなった。代わりに苔がみられ、草地は林縁を覆うようになった。食物連鎖の頂点にいるといわれるワシでありクマが目撃されている。本来の自然の生態系ができているのでは、と考える。
筆者は2016年度からはじまった生態観察会のメンバーである。観察会で、ふるさとの木(コナラ、クヌギ、ミズナラ、ブナなど)が育つことにより、森に様々な生物が集まってきたことを実感する。
これら生物たちは、旧松木村があった時に共存していた仲間たちである。これまで裸地・草地だったところに木が生えることで、多くの生き物たちが森に戻ってきたのだ。
「弱者の戦略」(稲垣栄洋著書)の本によると「生物たちはそれぞれのニッチでNo. 1を競い、勝ったものだけが生き残る。それは単純に強いものがNo. 1というのではなく、その戦略は、植物から動物に至るまでその生物種間でも、多様である。一見弱いような生物でも独自のニッチで生き残る。つまりそれは強いのだ。」と。
足尾は、いま森ができたことにより、互いに生きる多種多様なニッチが形成され、多くの生物が助け合い・支えあいながら競争をしているに違いない。それを可能にしているのが森なのである。今後も樹々の成長と同時にどのような生物が集まり、「生き残っている」のか、その「戦略」は何かなど、森に生かされていることを原点に森から学んでいきたい。それはきっと、人口減少・少子高齢化社会へと変わりつつある人間社会を憂い、いのちよりも経済優先を標榜してやまない人たちと抗い、森と生きる根源を見つけ出す参考になるに違いない。
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