アカシアの恵みは分け隔てなく届けられる
足尾の春は遅い。足尾に転居する前の花見は4月上旬だったが、足尾ではGW前後が花見だった。花が終わると新緑を迎えるが、その新緑の中に黒みがかった幹や枝が目立つ足尾の山々。立ち枯れてしまったのかと心配すると、黒っぽい枝に薄化粧したような白い花が咲きはじめる。それはニセアカシアであり、甘い香りは足尾町まで届く。 銅山から出る亜硫酸ガスや火災などではげ山となった荒廃地に植えられたのがヤシャブシやリョウブ、そしてニセアカシア。これらの木は、空気中の窒素を根粒菌に取り汲んでもらう。荒れてやせた土地に植えるには最適な木がニセアカシア。どうして芽吹きが遅れるのかは分からないが、多くの生きものたちがこの花を待っている。 この香りと甘い蜜を待っているのが、蜂と猿と人である。花の香りは甘く、目を閉じていると夢の世界にいるような気になってしまう。食べたことがないが、町民は「花の天ぷらがおいしい」という。この時季、ニセアカシヤに猿の群れが集まり、あちこちで花びらを食べている。蜂もせっせと蜜を吸い、養蜂家に貴重な恵み授ける。それは蜂蜜の最高級品と言われている。
人間の欲のために壊してしまった森。草木を甦らせようと植えたアカシヤが森を壊した人間にに”恵”を与えている。木々は人を差別せず、恵みを等しく分け与えている。森は人間の生活の在り方を教えているようだ。
今、新型コロナウイルス感染で世界中が大騒ぎとなっている。地球温暖化が進み、開発による環境破壊が進めば、新たなウイルスがまた出てくると言われている。「複合災害」を防ぐには、温暖化にブレーキをかけることとともに、私たちの生活スタイルを根本から見直すことを始めなければならないと思う。(足尾スタッフ・橋倉喜一)
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