2016年2月21日 (日)

笛太鼓を鳴らして、健やかな成長と平和な暮らしを願う“ひな祭り”

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 来月3日は女の子の節句「ひな祭り」。雨水(うすい)を過ぎた今月、娘二人の雛人形を箱から出して飾り付けた。祖父母が孫のためにと贈ってくれた三段飾りの雛人形。男雛、女雛、三人官女を箱から取り出すときは、我が子のような気持ちになる。娘たちが小さい頃は一緒に飾りつけをしたが、ここ数年は親の仕事になってしまっている。本当は小さい頃の様に親子で飾りつけたいのだが。

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 雛人形の原形は、人形(ひとがた)に自分の厄や災いを移して、川や海に流した「流しびな」と言われている。女の子の健やかな成長を祈る節句の年中行事となったのは江戸時代という。

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 ひな壇には、ひなあられや白酒、菱餅も供える。三色の菱餅は、下から緑、白、桃色の順に重ねて置く。緑は“よもぎ”、白は“菱の実”、桃色は“クチナシ”の色と言われている。これらの植物には邪気払いや健やかに成長するに相応しい薬草のような効用があるらしい。そうなると、菱餅ひとつとっても子の健やかな成長を願う気持ちが込められていることが分かる。平安時代から現代まで植物は人間の心と身体を、つまり命を支えてきたのだ、と言える。

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 ひな壇を見て「ありがとう」と言ってくれた娘たちには、今後の成長を想い、親の願いを伝えたい。森に生かされている冷厳な事実と5年前に発生した東日本大震災・フクシマ原発事故によって何十万人もの被災者が故郷に帰れないことを話したい。2年後、長女は選挙権を持つ。自分たちの未来を築くうえで大切な事を見極める目と心をもった大人になってほしい。

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 健やかな成長や平和で安全な暮らしは雛人形等に託しても非現実的だ。一部の企業や政治家、それに荷担する一部労組によって、原発再稼働・原発回帰の潮流がつくられ、また、民意を無視して憲法改悪・戦争ができる政策が暴走している。さらに、経済成長第一の社会は、今世紀末に「生存が不安定」な時代を迎えようとさえしている。

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 でも、原発に頼らない市民運動や戦争政策に反対する市民や労組の運動によって、その暴走にブレーキをかけていることも事実である。また、武器も持つことなく、電力をも自由に選べる暮らしができようとしている。さらに、森と海の力は、人間が努力すれば地球温暖化防止に加勢するために警鐘を鳴らしている。この「人間と自然の力」を信じて、世の中の「鬼」退治に決起しなければ平和で安全な暮らしは実現しない。

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 新緑は生命の息吹を与えてくれる。3月27日には「南相馬市鎮魂復興市民植樹祭」が開催される。その後、4月16日には同市で「ストップ!地球温暖化 原発に頼らない森と生きる暮らしを考える市民フォーラム」(仮称)を開催予定だ。五人囃子の様に笛太鼓を鳴らして、平和な世と春の訪れを楽しもうではありませんか。

                       (東京事務所 清水 卓)

2016年1月25日 (月)

生存の不安定な時代を呼び込む「鬼」を退治

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 まもなく節分である。この時季になると“しもつかれ”を食べる、と言う話しを聞いたことがある。先月その機会があり、“しもつかれ”を初めて食べた。見た目は悪いが、身体に優しく、美味しくご馳走になった。

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 この時季、栃木県北では雪交じりの“那須がおろし”が吹く。幼い時は、この時季に豆蒔きをした。この大豆と室から取り出した野菜(大根、人参)をすり降ろし、油揚げと鮭の頭や骨を鍋に入れ、醤油と酒粕で味付けをしたのが“しもつかれ”だった。一晩ねかせたこの“しもつかれ”は、美味で栃木県の名物。聞くところによれば、古くは江戸時代から飢饉の時に飢えを凌ぐための食べ物で、「救荒食」として使われていたと言われている。

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 2月3日は節分。旧暦では2月4日は立春で新年の始まり。現在の1月1日(元旦)である。節分はその前日だから大晦日にあたり、昔から大事な節目の日として考えられてきた。節分には大豆を蒔くが、これは中国から伝わり、無病息災を祈る意味があるとう。日本は千年以上も前から、災いや病気は「鬼の仕業」とされ、季節の変わり目には「魔(鬼)がくる」と考えられてきた。 

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 この時季は、寒さで身体の免疫力が低下し、風邪等をひきやすい。その魔(鬼)を払い清め、福の神を新しい年に迎え入れるため”節分”に豆(=魔滅)を蒔くようになった。大豆は「畑の肉」、たんぱく質が豊富、空気中の窒素を取れ入れる機能をもっているので痩せた土でも育つ。それを食べれば病気にも強くなると言われている。節分には、「鬼は外―、福は内―」と、無病息災の新年を迎える。

 ところが大豆の多くは輸入品が圧倒的だ。日本の食糧海外依存度は60%以上だから、穀物が外国から日本に運びこまれる過程では、化石燃料が多量に燃焼され、二酸化炭素が排出されている。先人たちの「地産地消」と、無駄をなくした暮らしを現代社会に活かしていれば、どれだけ二酸化炭素排出を抑えられたことか。そんなことを節分前に考えさせられる。 

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 さて、今年の節分ではどんな「鬼」を退治するか。原発再稼働を進める政府と企業、その上、石炭火力発電を増発する企業によって地球温暖化防止対策を本気にやらない鬼、民意を無視して戦争政策を強引に押し付ける鬼を退治しなければならないと思う。

 来月3日は、日本産の大豆を買って、無病息災と平和で安心な暮らしを呼び込む「鬼」を心の中に向かい入れたい。(理事 大野昭彦)

2016年1月 4日 (月)

森の恩恵に支えられている人間の暮らし  

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 暖冬の新年を迎えた。朝6時半頃、森は薄暗く、窓から三日月を観ていると外は寒そうだ。20年以上も標高約1300㍍の森で新年を迎えているが、こんなに暖かい年は初めてだ。とは言っても朝の気温は-10度程になっているが、いつもの時季は-15度程であるから今年は暖かい。

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 寒いと身体を縮めてしまうが、唯一常緑樹のシャクナゲの葉も縮こもる。しかし、朝陽が当たってくると写真の様にシャクナゲも葉を拡げて、嬉しそうに深呼吸をしているようだ。

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 暖冬だからいつもの冬鳥たちには遭えないと思っていたら、ベニマシコが餌台に姿を見せてくれた。遠方より友来る、である。

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 太陽の陽が眩しくなると、小鳥たちが活発に飛びまわる。

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 浅間山は1873年に大噴火した。火砕流などで大勢の村民がその犠牲になった。毎年、その犠牲になった村民の気持ちを忘れまいと、近くの鎌原観音にお参りする。今年は、近くの鎌原神社にもお参りした。

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 この境内には、寿命250年のモミの木、樹齢350年のケヤキの巨木が生きている。案内板によると、昔はモミの木で棺桶を作り、亡骸を土に戻していたという。ケヤキは鎮守の森の主役になって神社を守っていたという。

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 また、神社の入口には1800年代の土蔵がある。異常時の村民共有倉庫らしい。写真の様に土蔵には一切金属は使われていない。材は土と植物だけである。土は植物の葉や枝などを土壌分解動物たちの働きで作られたものだ。

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 2016年は、“ストップ!地球温暖化 原発に頼らない 森と生きる暮らし”を創るアクションのスタート年。人類の責務として、改めて、森に寄生して生かされている冷厳な事実を認め、生存が不安定な時代を迎えないようにしたい。(理事 髙橋佳夫)

 

2015年7月 4日 (土)

食中毒シーズンに耳寄りな話?

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 今年の梅雨は長引くそうだ。レルニーニョが影響していると気象庁は述べている。この時季、足尾銅山労働者が住んでいた長屋を借りて森作業をしていると、食中毒に気をつかう。

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 今年、Yさんから提供された中古の冷蔵ケースがそれに役立っている。食材が腐りやすい時季、スーパーも近くにない長屋では、食材を長持ちさせるものが木の空き箱であることに気が付いた。クッキー等が入っていた箱を捨てないで、その中に野菜や果物をいれて保存していると、そのままケースに入れて保存するのとは傷み具合が違う。長持ちするのである。

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 昨年11月、森びと設立10年記念の講演会で講演してくれた志村史夫先生は、「木に惚れる」と題して話をしてくれた。そこで紹介されたのが、木の箱に入れたパンとバナナ、それらを箱に入れない場合と入れた場合の腐り具合であった。一週間後の結果は、箱に入れたパンとバナナが腐りにくいということであった。箱に入れないパンはカビが生えて黒くなり、バナナも黄色い色が黒くなりはじまっていた。

 これを足尾の長屋で実践している。箱の材は洋材なので今年の夏は、スギ、クスノキ、アオモリヒバ等の材を探して、冷蔵ケース用の箱を作ってみたい。

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 何年か前、0157菌が社会問題になったが、弘前大学の研究結果ではアオモリヒパに含まれている物質には抗菌作用があり、この051菌を殺菌するという記事を読んだ記憶がある。

以前紹介したが、田中修著『植物はすごい』(中公新書)には、こうした草木のいのちを守るための物質が、実は人間のいのちを守ってくれることにもつながっていることが解る。

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 そういえば現役の頃に寿司屋で寿司を食べた時、寿司ネタは檜の葉や笹の葉の上に並べてあった。ヒノキ油の成分のヒノキチオールが「フィットンチッド」と呼ばれる香りとなって、殺菌抗菌作用をしてくれる、と田中修さんは著に書いている。

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 野菜や果物が安く帰る時、少し多めに買って保存しておくのに役立つのが木の箱である。冷蔵庫の野菜室に木の箱を入れ、その中に野菜や果物を保存してみるとよい。試した結果をみんなで分かちあいたいですね。さらに、中々殺菌できない“民意圧殺菌”も皆でなんとかしたいですね。(OWL)

2015年1月 6日 (火)

森に寄り添って生きていけることが最高の幸せ

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 私は毎年正月、住居近くの鎌原観音堂で初詣をしています。1780年代に浅間山が噴火して、その犠牲になった村人を祀っている観音堂なので、浅間山の恵みに寄り添って暮らしている一人として手を合わせています。(写真は1月の浅間山です)

 私だけでなく世界中の人々は猛烈な台風、豪雨や高潮そして干ばつと大寒波に襲われ、その原因が地球温暖化による海水温度の上昇が原因のひとつである、ということに気が付いています。ところが一昨年の大島町の豪雨による土石流災害、昨年の広島市での土石流災害では、人間の自然の猛威に対する認識の甘さが露呈したのではないかと思っていました。

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 柳田邦男氏は『毎日新聞』(昨年12月27日付)で、「・・丘陵沿いの谷筋と言われる地域への宅地開発の危険だった。しかし、高度経済成長と都市化の急速な進展の中で、行政や不動産業者はそのような地域のリスクを考慮しないで、宅地造成を進めていった。行政はある程度の規制基準を作っても、宅地開発の急激なペースに対して、災害危険地域の指定と規制の甘さや人手不足などで対応しきれなかった。経済優先のツケが、最近の異常気象で一気にまわってきたのだ」、と述べています。

 人間の“欲”が防災意識と自然の猛威に対する先人の教訓たる史実を疎かにしてしまったのです。「日本はどこでどんな地震・津波が起きても不思議ではないという史実」を疎かにしてはなりません。その上、人間は自然の猛威を食い止めることができるという一部科学者の神話に騙されてはならないと思います。

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 森と生きていく知恵は、自然の猛威は支配できないのであるから、猛威から命を守るために自然の力を借用する、そして私たちは森に寄り添って生きていくしかない、ということではないでしょうか。現状の経済優先の社会システムが継続する以上、地球は温まり、世界各国では意表を突く自然の猛威が荒れ狂うことでしょう。

 森(自然)に生かされていることの認識を防災の基本にして、今年も“原発に頼らない森と生きるライフスタイル”を具体的なスタイルに描きたいと思います。全国の“森とも”のライフスタイル案もお寄せください。(高橋佳夫)

 

2014年12月 9日 (火)

森に寄り添って生きるために努力と経験をしてきた先人の知恵

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 足尾松木沢の山々は深い眠りに入っている。早いもので今年も間もなく冬至(22日)を迎える。いつもの自然界の移り変わりであるが、四国の徳島県山間部の皆さんは、その移り変わりを「初めての雪害」として経験している。

 集落へ通じる道路がストップしても、停電が続いていても山間部の高齢者の皆さんの暮らし振りはニュースで観る限り落ち着いて見える。むしろ余裕がみられ、そこには自然界や人間(地域)社会の掟を生きる知恵として身に着けていることが垣間見える。

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 がんじがらめの規律や法律でなく、それは自然の摂理や地域社会の人間同士の決まりごとである。この掟を破ろうとすれば、“バチが当たる”と小さい頃に言われたものだ。この掟に律せられて私たちは自然界の恵みに寄り添うことができ、地域社会から支えられて生きていける。

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 それにしても毎年振り返ると、想定外の異常気象、それによる犠牲と災害が世界各国で増えていることが心配だ。要因は海水温の上昇による偏西風の蛇行による、と言われているが、原因は自然界の掟を無視した人間の活動結果である、と言わざるを得ない。

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 宮脇昭先生は、「自然界が発している微か(かすか)な情報、現場で発している微かな情報から、見えない全体をどう読み取って、どう問題が起きる前に対応するか。これが人間の叡智であり、感性である」と述べている。(松崎明対論集『バチが当たる』・創出版)

 また、故・松崎明氏は、「洞察とか予見というのはある種の感性だとわたしは思うのですけれども、感性と言うのはやっぱり経験と努力によって磨かれるもので、実践なしには感性などというものは絶対に磨かれない。やっぱり実践もある種の理論的な基礎づけと言うか智慧というものを取得しないと、実践というのは生きないのです。」と述べている。

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 世界各国で猛威を振るっている異常気象という見えにくい自然界を読み取っていかなくてはならない私たちですが、森(自然)の恵みに寄り添って森と生きる努力と経験をしてきた先人たちの知恵を現代に活かしていくことによって、その洞察や予見が、そして問題が起きる前の対応が見えてくる。人間社会に“バチが当たらない”ようにしていくためには、生物社会の掟をこれ以上ないがしろにさせてはならない。

 蝋燭の炎で雪害を乗り越えている徳島県山間部の高齢者からはこんなことが発信されているのではないか。(理事 高橋佳夫)

 

2014年8月 1日 (金)

人間には及ばない植物の智慧を暮らしに活かしたい

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 今や栃木県内では幻となってしまったチタケ(チチタケ)。チタケは夏のキノコで茄子との相性がよく、油炒めをしてうどんの汁をつくる。栃木県人の多くはその味の美味しさにまいってしまい、チタケが出る時季をそれは楽しみにしている。チタケを傷つけると白い乳液みたいな液が出る。美味しい味の素は、この“乳液みたいな液”にあるような気がする。

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 写真のようにタンポポの花柄を折ると白い液がでる。他にも白い液を出す植物は見かけるが、今が旬なのはイチジク。北関東では間もなく庭先のイチジクが美味しい実を熟すが、この実を採るとタンポポと同じような白い液が出る。液はベタベタし、少し苦みがる。これには虫たちも嫌がり、近寄らないようです。

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 『植物はすごい』(田中修著・中公新書)によると、この「液にはタンパク質を分解するフィシンという物質が含まれている」と書かれている。フィシンはタンパク質を分解(「肉のタンパク質が分解される」)するといいますから、虫の体はタンパク質で構成されているので、当然、虫はこの液には近寄らないと思う。

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 植物の遺伝子を守っていくために植物は、刺をつけたり、液を出したり、苦みをつけたりするなどその戦術には頭が下がる。人間はその物質に酔ったり、助けられたり、美味しさを味わったりしている。

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 暑い時季、寒い時季、乾燥地や湿原そして高地や低地などで誕生した植物が、遺伝子を守り抜くための試行錯誤がその戦術となっている気がする。その恩恵を授かって人間の遺伝子も守られている。そして植物を餌とする虫たちから食物連鎖が始まり、生態系が保たれている。その一員でしかない人間は植物と共に、いのちを守る営みを暮らしの基底に据えなければと思う。

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 地球上では想像できない異常気象が各国を襲い、尊い命が奪われ、被害が相次いでいるというのに、人間社会では一部の人たちが市民・農民・子供たちの命を奪い合っている。日本でも「積極的平和主義」の名のもとに、「集団的自衛権」の行使ができるように法整備が行われようとしている。

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 本当に国民の命と暮らしを守るのか、「積極的平和主義」の擬態を見抜いて、原発に頼らない森と生きる暮らしを営まなければと思う。人間には遠く及ばない植物の智慧に、緑に、我々のいのちは支えられているのだから。(理事 高橋佳夫)

2014年6月11日 (水)

“豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富”

P5313065_640x540  5/29、ラジオ放送で「赤ちゃんには母親のおっぱいを飲ませるとよい。母親の胎内に生きる細菌がおっぱいに交じって赤ん坊の胎内にも生きるから」、と言っていました。

 田中修著では、コアラが主食にしているユーカリには青酸が含まれているがコアラは死なないと述べています。それは青酸を分解する細菌がコアラの胎内に生きているから、と書いています。コアラの親はその細菌を子供の胎内に生かすために、母親の糞を子供になめさせる、とも書いています。すごいですねー。ところで、私たちの身体も様々な善玉菌が悪玉菌から身体を守ってくれているようです。細菌に頼って生きているようなものです。 

P5313073_584x490  5月に35度以上の暑さを観測しました。北海道では50年ぶりの観測だと報道していました。当時は、足尾・松木沢渓谷入口でも松木川からの沢風が吹き上げてこない瞬間はぐったりするほどの暑さでした。10年以上もこの地で森づくりをしていますが、この暑さは初めての経験でした。 

 臼沢の森や民衆の杜の植物たちもこの猛烈な暑さに参っているのだろうと思います。人間の暮らしではクーラーや扇風機、うちわで暑さを凌ぎますが、植物たちはどうしているのでしょうか。田中修著『植物はすごい!』によれば、植物たちには冷却能力が整っているようです。「太陽の強い光を受けている葉っぱは、水を蒸発させることで、からだの温度を冷やします」、と書いています。 

 どうやら私たちが暑いときに汗をかくように、植物たちも水分を蒸発させるようです。この時季の朝、足元の草の葉をじっと見ると、葉の上や葉の先に水分が溜まって流れ落ちない様子が写真の様に見えます。小さいころの朝方、家の前の畑で里芋の大きな葉の中に水たまりが丸くなっている様子を見たことがあります。これは暑い昼に水分を蒸発させたので、涼しくなった夜に水分を吸収しすぎたので余った水が溢れ出した(溢水)という現象です。

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 ところで、先月(5月)の真夏日にも日射病(熱中症)にかかって亡くなった方がいました。色々な原因あるようですが、毎年、同じ繰り返しをしている私たちは人と自然(森)との仕組みによっていのちが守られていること見失っているのでしょうか。本日(6月11日)、東日本大震災とフクシマ原発事故から3年3ケ月経ちました。先月21日に判決された大飯原発差し止め、「経済活動より命を優先する考え方から」、という樋口明裁判長の訴えを暮らしの基底にしっかりすえていきたいものです。(高橋佳夫)

 

2014年4月16日 (水)

桜の誘いは健康の糧にしてください

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 日光市足尾町旧松木村周辺の桜開花は来週中と思います。今、桜は毎日の春陽に暖められて蕾が膨らんできています。今月27日に実施する「春の感謝デー」には森作業と花見が楽しめる気がします。

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 ところで花見を楽しんだ後の桜の楽しみがあることを知っていますか。そのひとつに散った花弁の塩漬けを茶にして味わうひと時です。私もこの香りと塩味が心を和ましてくれるので気が向いた時に、桜茶を飲みます。先月末、近くの谷中銀座で買った桜茶を本日の朝飲んで、この原稿を書きました。

 もうひとつは、桜の葉に包んだ餡が入ったもちです。これは花の香りでなく、桜の葉の香りが心を和ましてくれますし、餡入りの餅が疲れを忘れさせてくれます。

 桜の気持ちを考えてみれば、花の色と香りで蜂やメジロ、ヒヨドリ、シメ等の鳥たちに蜜を恵み、そのお返しに子孫を繋ぐために受粉の手伝いをしてもらっています。花が散った後は、実を育てるために栄養(光合成)を作る葉を守ります。虫たちが葉を食べると、葉は虫たちが嫌う臭いを出します(田中修著『植物はすごい』中公新書より)。

 桜餅は葉で餅を包んでありますが、その葉は枯れています。田中修さんの本によると、香りが良いと感じる時は葉が枯れている時、葉が虫にかじられている時、写真のように手で葉をちぎった時のように葉に傷をつけた時に心なごむ香りを出すということです。この香りは虫にとっては嫌がられるそうです。

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 本日、筆者も桜の葉に傷をつけて30分程した葉の香りを嗅いでみました。田中修さんが言うとおり、傷をつけない葉は香りを発していませんでした。虫たちにはこの匂いが嫌いなので、桜はこれで葉を守り、受粉した後にさくらんぼへ育て、夏になるとその実を鳥たちに食べてもらったり、落としたりして子孫をつないでいるようです。やがて葉は枯れて土壌分解動物たちの餌となり、その糞を桜や他の植物の栄養にしています。

 こころ和む香りはクマリンという物質ですが、この物質が香りを出すためには葉に含まれているもうひとつの物資が、傷ついたりかじられたりして、この物質とクマリンが反応して香りを出します。

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 桜のきれいな花で人は酔い、散った花弁で桜茶を飲んで心が休まり、花見会や茶会で私たちは友達の絆が強まり、友達の輪を広げています。桜の恵みに感謝ですね。是非、葉桜も楽しんで下さい。

 足尾での「春の感謝デー」は、そんな気持ちをもちながら花見と森作業を楽しみたいと思います。(理事・高橋佳夫)

 

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2014年3月16日 (日)

植物に頼らなければ生きられない私たち?

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 足尾・森びと広場で一番早く咲く花は水仙です。日光市に住む柴田さんが数年前に植えてくれた水仙が、毎年私たちを和ましてくれます。今年も間もなく芽を出してくれそうですが、今年は残雪が多いのでいつもの年よりも若干遅いのでしょう。

 足尾にはウサギ、猿、鹿、ネズミそしてモグラ等が生息しています。水仙以外の植物はそれらの動物のエサの一部になっていますが、水仙だけは害に遭っていません。動物たちには嫌われているようです。以前、柴田さんは「水仙には毒があって動物は食べない」と言っていました。また、事務局の水落君は以前、「ニラと間違えて水仙の葉を食べると下痢や嘔吐がする」と言っていました。足尾の植樹では、低木の木としてアセビ(馬酔木)を植えていますが、この木も動物の食害に遭いません。動物に嫌われる何かがあるようです。

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 そんなわけで『植物はすごい』(田中修著・中公新書)、『うまい雑草、ヤバイ野草』(森昭彦著・サイエンス・アイ新書)を読んでその訳を調べてみました。

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  植物はこの他に、刺、汁、香り等で身を守り、子孫を残しているそうです。人間は、この植物の素晴らしい生き残りをかけた仕組みを暮らしに活かしています。例えば、ヒガンバナは田んぼの畔や墓の周辺に生えています。それは田んぼや墓にモグラやネズミを寄せ付けないためです。先人は、ヒガンバナの球根に含まれているリコリスという有毒物質に私たちの主食や先祖の魂を守ってもらいました。

 これから新緑が眩しくなるころは太陽光に紫外線が多く含まれています。私たちは帽子を被ったりして皮膚がんを防いでいます。紫外線は身体や葉にあたると、「老化を急速に進める」と言われている活性酸素という物質を発生させます。その代表的なものにスーパーオキシド(植物を枯らす農薬に使用)と消毒液のオキシドール(過酸化水素)があります。ご存知のようにオキシドールは傷口の細菌を殺し、スーパーオキシドはごく微量でも飲んでしまえば命は失われると言われています。植物は、この有害な活性酸素を消去するために、抗酸化物質(ビタミンCとビタミンE)をつくっているそうです。当然、私たち人間も活性酸素を消去していくために、このビタミンCとEを含んだ野菜や果物を摂取しています。このようなことを知ると植物には頭が下がります。

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 先人は大昔から、森の中で植物の身を守る知恵、子孫を持続させていく工夫を観察し、暮らしに取り入れてきました。東日本大震災・フクシマ原発事故を経験した私たちは、改めてこの植物たちの素晴らしさに感謝し、間もなく訪れる森の恵みに頼らなければならない時代へ向けて、暮らし方を変えなければならないようです。(理事・高橋佳夫、スズメの写真は森とも:大橋新さん)

 

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