« 2021年7月 | メイン | 2021年9月 »

2021年8月

2021年8月30日 (月)

宮脇先生、天空の森から応援してください。いのちを守る本物の森づくりを!

 「一番困難な場所で森がつくれれば、世界のどこでも森がつくれる!」2004年9月、足尾銅山跡地に立った宮脇昭先生は、草の生い茂った松木村跡の土を掘り、手に取って匂いを嗅ぎました。

 「地球温暖化にブレーキをかけるために、温室効果ガスの吸収源となる森をつくる」という「森びと」の調査に同行させていただいた私に「土の匂いがするか。匂いを嗅いで、舐めてみなさい」と言われ、茶色い砂の多い土壌からは、ミミズなど土壌動物が分解したあとの腐葉土のような匂いはしなかったことを覚えています。のちに開催される「森びとインストラクター」養成講座での講義で「木は頭から枯れる。木は根、根は土だ」とその意味を知りました。

2004929_2

2007429

 

2006

 2005年から植樹を行った「臼沢の森」は県が植栽した場所ですが、植樹後の育樹作業の不足と思いますが、竹に支えられた苗木の大半が枯れており、根を確認すると根腐れを起こしていました。宮脇先生は「苗木を植えた後の3年間は下草刈りを行う。3年経てば幼木は草より生長し、草に負けず、木々との競争で成長する。競争しながら、お互いに少し我慢し、共に共生していく」と人間が手をかけた森づくりは、赤ん坊を育てるように、子供の成長を促すように、植樹地の状況を見ながら育樹を行わなければならないことを教えてくれました。しかし、働きながらのボランティア活動のため、どうしても人間の都合に合わせた森づくり参加になっていきました。

2004929_3

 

20074

 足尾の松木地区はシカやサルが多く、禁猟区のため冬になると尾瀬や日光中禅寺方面からシカが越冬にやってきました。木々を守る獣害柵が張られていますが、落石やシカの体当たり、イノシシが柵の下を掘り入り込んできます。点検を怠ると幼木の頭が全部食べられてしまった年もあります。また、草刈りを怠り、苗が蒸し風呂に入ったように草に覆われ枯らしてしまうこともありました。常に問われていることです。

P8291120

 

 こうした足尾の荒廃地では、3年の草刈りで木々への手助けが終わるわけではなく、豪雨による落石や動物たちに穴をあけられた獣害柵の修繕、植栽地の階段づくり、土留めづくりなど、多くボランティアや献身的なスタッフ、サポーターの皆さんの手仕事によって森がつくられてきました。

055281_034


  2005年に宮脇先生と一緒に植えた40cmほどの木々は、10mを超える森へと生長しました。「公害の原点」と呼ばれ、はげ山(荒廃地)となった足尾の山々ですが、巨大化する豪雨災害に強い森へと育てていく挑戦は終わることはありません。

 

P8291116

P8291087

 森づくりの巨人・宮脇昭先生が7月16日に“天空の森”へと旅立ちました。先生、旅立つにはまだ早いですよ。9月15日、森びとプロジェクトは宮脇先生の森づくりへの情熱を少しでも継承できるようにと、臼沢西の森に93本の苗木を追悼植樹します。強者スタッフ、サポーターの先輩方と気持ちを一つにして、山と心に木を植え、いのちを守る本物の森へと育てていきます。

P8291040

 『希望の明日を拓くのは他人まかせではいけない。一人一人が、自分の命、愛する人の命、かけがえのない遺伝子の細い絆を守るために、木を植え本物の森をつくる。これは、いつの時代でもどこでも、人類が生き延びるための正攻法であると確信している。まず植える。植えながら議論しよう。机上の議論をいくら繰り返しても、それだけでは不十分である。実際に木を植え、いのちを育てていこう』(宮脇昭著:いのちを守るどんぐりの森)より。

Photo

 (運営委員・清水卓)

2021年8月27日 (金)

子や孫にツケを押し付けないようできることをやろう

 今月9日、国連の気候変動に関する政府間パネルIPCCが発表した「第6次評価報告書」では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地はない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている」と断定しました。

Https___imgixproxyn8sjp_dsxzqo091_2  今月に入って九州、中国地方を中心に豪雨が発生し、山間部では土砂崩れの被害が多数起きていますが、2014年の広島や2018年の西日本など、ほぼ毎年起きています。もはや想定外の異常気象が日常化していると捉えなくてはなりません。 皮肉なことに、人間が自ら作り出した地球温暖化によって、命にかかわる異常気象が日常化し、私たちの生活が脅かされています。Photo_3

 昨年、菅首相は2050年カーボンニュートラル宣言を発表し、2030年の削減目標を2013年度比で46%、そして50%の高みに向けて挑戦すると発表しました。しかし、そこには化石燃料依存、原発依存のエネルギーミックスを掲げています。私たちは、最も二酸化炭素を排出している化石燃料、そして危険な原発を止め、自然エネルギーへと転換していかなければならないと考えています。あわせて、植林による気候変動対策を国民運動として活用していくことも同時並行し行動しなければ、この気候危機を乗り越えることはできません。気温上昇を1.5度に抑えるためには、二酸化炭素の排出許容量は約4,000億トンだと推定されています。現在のペースでの排出が続けば、あと10年程で使い切ってしまう量であり、地球は悲鳴をあげています。もはや残された時間はなく、対岸の火事ではいられません。

202106290305_top_img_a 環境に負荷をかけない大量生産・消費型の経済システムからの転換の第一歩をできることから始めませんか。私たちは栃木県日光市足尾の荒廃地に木を植え、森を育てる「里親植樹」を行っています。http://www.moribito.info/fosterplanting.html

Graph1 (運営委員・小林敬)

2021年8月23日 (月)

県議が臼沢の森・松木・民集の杜を視察しました。

 世界中の大雨や猛暑のニュースが絶たない。その情報を聴く度に、明らかに気候変動(地球温暖化)の影響だと思う。IPCCはその原因が人間の活動によるものだと断定した。このままの暮らしを続けていくと、2021~2040年の間に気温が1.5度上昇する可能性が高いという。今までの調査よりも10年早まった。既に1.09度に達している。このままだと熱波や豪雨が増え、それが原因で山火事や水害が世界中で頻発するという。P1010071_2 これからの暮らしがどうなるのかと、危機感を抱いている人は多いと思う。しかし、それは他人事で済ませているのではないかと思う。企業や自治体はその対策を打ち出していますが、経済成長との関連でその技術開発に重きを置いているように見えます。それは私たちの生活に直結します。これは大事なことですが、炭素社会の生活を見極めていかないとついていけない人が社会に溢れてしまうことになると思う。今、早急にやらなければならないことは、世界中の人々の暮らしを脅かしている二酸化炭素排出量とそれを吸収できない森と海にしてしまっている現状を、自然界が吸収できる範囲内の排出にすることではないか。

P1010066P1030307 私たちはその吸収力を高めていくために、足尾の荒廃地に森をつくっている。しかし、市民の森づくりでは世界の排出量を吸収していくには間に合わない。政府が計画する10年間で1億本の木を植える「国民参加の森林づくり」を期待したい。そこで、県ファンクラブはその国民運動を積極的に推進していきたいと願い、県議会に陳情書を提出する準備をしている。

 その一環として、M県議会議員に現地を見てもらった。昨日(8/22)の視察では、私たちが育てている「臼沢の森」、「民集の杜」を見てもらった。M議員からは、「本当に素晴らしい森で、この活動は今まさにタイムリーなこと、陳情書の提出にバックアップしていく。」とのコメントをいただいた。

Img_2131 P1030551Img_2136 Img_2138

 是非、足尾の地でも「国民参加の森林づくり」が始められることを願っている。Ⅿ県議会議員に感謝を申し上げます。(栃木県FC:加賀春吾)

2021年8月20日 (金)

国際連帯で二酸化炭素削減アクションを

 昨日迄の1週間の天気は、8月下旬に梅雨の再来でした。今日(18日)は、やっと木々の間から夏の青い空を見ることができました。夏空がなつかしく感じられました。この期間、九州・四国・山陰地方では年間降水量の半分の雨が降り、土砂崩壊などで人命が失われ、今も行方不明者の捜索が続けられています。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りすると共に行方不明者の皆さまが一刻も早く発見されることをお祈りいたします。 

Dsc05838  先月は、熱海市で大規模な土石流の発生で多くの人命が失われ、今でも行方不明者の捜索が進められています。一方でコロナ感染症が急拡大し、緊急事態宣言の延長と地域の拡大が出されました。これは日本だけでなく、世界中に急拡大しているようです。

Dsc05834  この自然災害は人間の誤った生活スタイル=大量生産・大量消費のための生活によるものだと思います。対策を速球に実施に移さないと、この自然災害は大きくなるばかりだとIPCCは警告しています。政府の森林・林業事業計画では「国民参加の森林づくり」が計画され、10年間で1億本植樹を目指す国民運動が計画されています。今は、このような対策を国際的に実施することではないかと思います。

Dsc05835  茨城県FCでは、どんな対策が可能なのかを話し合っていますが、二酸化炭素を吸収する木を植えること、しかし、これだけの対策では気温を下げることができないので、二酸化炭素削減を世界中で一斉に行う統一アクション日を設けて、国際連帯の削減アクションを実施するように、国連にお願いしていけないかと模索しています。

Dsc05836  森ともの皆さんのアドバイスをお願いします。(茨城県FC・済賀正文)

2021年8月18日 (水)

“山と心に木を植える”活動を今秋に再スタート

 各県ファンクラブの皆さん、“山と心に木を植える”活動が出遅れていました神奈川県FCです。やっと活動を始められるようになりました。以降よろしくお願いします。神奈川県FCの活動は秋から再開する予定です。

Dsc02645        足尾にて(2011年)

 8月に入っても全国各地で異常気象により強風や豪雨で、河川の氾濫や堤防の決壊、土砂災害が発生しています。7月には神奈川県の隣にある静岡県熱海市では「人災」と言ってよい大規模土石流により、多くの人命と生活が奪われてしまいました。地球温暖化による気候変動と合わせて、人間の悪行によって引き起こされた人災に遭うたびに、“山と心に木を植える”活動の大切さを実感しています。

20210816_125542  毎年、想定外の異常気象に怯えることなく、森と海の恵みが持続され、命を育む循環ことのできる安心・平和な社会でありたいと願っています。そのために私たちの活動に賛同してくれ、共に活動を担っていただける“森とも”との出会いを求めていきたいと構想しています。当面は、身近なシニア世代に呼びかけ、現役で培った知識と知恵を次世代の心に植えられる活動に視点をおいています。各県FCのアドバイスをよろしくお願いします。

3 Photo     真鶴半島の魚つき森

 その誓いを固めていくために、真鶴半島(神奈川県)の「魚つき保安林」に起っていきます。また、少しでも二酸化炭素を吸収してくれる木を植えていくために、「里親植樹」にも参加していきたいと考えています。(神奈川県FC・木之下貴弘)

2021年8月13日 (金)

生涯、森づくりの主役でありたい

宮脇 昭先生がお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。

Img_0140 「まじぇる まじぇる タブノキ タブノキ タブノキ」と3回大きな声で言って植えなさい。好きな奴だけ集めない。目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って調べる。大勢な人の前で麦わら帽子の先生の元気な頃を思いだします。幼木を2本植えたら林になり、3本植えたら森になり、5本植えたら森林になると、日本一いや、世界一多くの木を植えてきた私の先生。人間、本気になればできないことはない、と教えられました。森びとインストラクター養成時の、「土地本来の本物の森、いのちの森を足元からつくっていこうではありませんか」と話す姿が思い浮かびます。 

Img_0278 「森づくりはあなたが主役です。まだ間に合います」と、今でも宮脇先生の大きな声が忘れられません。

Img_0694  森を壊したらバチが当たるとして、先人は集落に神社や祠 山の神 水神さまなどを祀ってきました。

Photo  今、先人たちの森と生きる暮らし方を甦らす時が来ていると感じます。森を衰弱させてきた結果、そのバチが当たり、日本人は(世界中の人が)毎年のように想定外の異常気象に怯えています。文章を書いている13日にも、大雨が全国的に降り、土砂災害の報道が流れています。

Photo_2 「鎮守の森」に興味を持ち、福島県中通り周辺の森に立ち寄っています。そこには、土地本来の高木から低木、下草がきちんと役割をもって小さな社会をつくっています。長い時を経ても、神社を雨、風、火災などの災害から護っていることが窺えます。

Img_0693  宮脇先生から学んだ森と生きる暮らし方を生涯続けたいと、合掌です。(福島県FC・齋藤 章)

2021年8月 6日 (金)

想定外の暑さの中で、“水”に感謝しました

Dscn0448  秋田も大変な暑さです。多くの人は温暖化の影響で、地球環境がどんどん悪化しているよう感じていると思います。私もその一人です。雨の降り方もこれまでと違うことを実感しています。熱帯夜で眠れないという心配はここ秋田県内の私は経験していません。森林のお陰だと思っています。しかし、このままの生活を続けると孫の世代には熱帯夜で眠れない夜が続くのではないかと心配します。森林も疲れ果てるのではないかと思います。

Dscn0444  上の二枚の写真は地元の水資源の写真です。大きな森林が水を貯え、適度な量の水を森から里へ流してくれています。改めて日本の水資源に感謝します。ところで私たちの生存は大気圏や地球上の水に支えられていると思っています。身体も水分が殆どですし、北極から南極に至るまでが水分です。南極や北極では水分が溶けたり凍ったり、湖や沼そして地中に溜まり、流れたりしています。大気中には蒸発した水分が雪や雨になって大地に降っています。

Dscn0450  この循環が私たちの命を育む日常の水として蛇口から出ています。すべてがつながって私たちが生存しています。そのように考えると、森づくり活動は誇れる活動だと思います。水資源の確保では紛争が起きることがあります。猛暑の中、子供たちが水遊びをしている様子を観ていると、水の有難さをつくづく感じます。

Dscn0452

Dscn0449  近くの水資源を歩いていると、私たちの生存の足元をじっくり見つめなおしていくことの大事さを突き付けられます。その水には草木の存在が欠かせないことも実感できます。森林が無くなれば砂漠化が進むことは歴史が証明しています。清流を眺めながら感じた一日の報告をしました。健全な森づくりに力が入ります。(秋田県FC・船木藤典)

2021年8月 3日 (火)

台風8号上陸直後の森の防潮堤づくり

7月28日の育樹作業は台風8号の直撃を受け、中止することにしました。しかし、朝には雨が上がり風も弱まり、予想していた被害もありませんでしたので、午後から集まれる人たちで作業を行いました。

Dsc01053  今年3回目となる作業は、刈払機による草刈りと下枝払いを行いました。下枝を払うことで、日陰で生長が遅くなってしまうシラカシ、アカガシ、シロダモ、ユズリハ、ヤブツバキなどに太陽の陽が当たるようにしました。

Dsc01051

Dsc01050  今年の台風8号は直で宮城県に上陸するという観測史上初でした。近年いたるところで「観測史上初の」というが言われるようになってきました。二酸化炭素等の温室効果ガス排出が増えることにより、各国でその影響が出ています。そのスピードは毎年早まり、巨大化し、その対策は深刻化しています。この時季は、毎年、豪雨災害を心配しなければならなくなりました。

Dsc01052  仙台市の荒浜、名取市の「いのちの森」が少しでも役に立ってほしいと願っています。私たちは、森作業をしながらそんな気持ちを共有しています。(宮城県FC・林雄一)

2021年8月 1日 (日)

ポストコロナ社会像のヒントに『ダニが刺したら穴2つは本当?』を

大雨が降り、土砂流出や土石流が発生すると何十年以上もせっせと土壌をつくっている土壌分解動物たちはどうしているのかと心配しています。流された岩石のでは草木が直ぐに生えない。岩石の上では地衣類等が土壌づくりをはじめてくれてから、植物遷移がはじまります。

Photo  昨日、『ダニが刺したら穴2つは本当か?』(法政大教授島野智之著・風濤社発行)が著者から送られてきた。土石流の後のそのヒントはこの本に書かれていた。以前から、島野さんとはこんな話をしてきたが、この本はポストコロナ社会像を考えるうえでその基礎が分かる。

Photo_2    ダニを運ぶトキ

 土壌づくりをしてくれるダニたちの働きが、私たちの生存基盤である森の生長を助けていることがこの本で分かる。そして、ダニたちは渡り鳥や他の生きものたちとの連携を巧みにやっていることも知ることができる。

Photo_3  このようなダニを調査・研究し、分かり易くまとめている島野さんに感謝です。私にとって、この書はポストコロナ社会像のヒントを与えてくれる大切な一冊です。島野さん、ありがとうございました。(顧問・高橋佳夫)