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2022年1月

2022年1月29日 (土)

太古の昔から植物の助けを借りて生きてきた私たち

 新型コロナウイルス「オミクロン株」が急拡大する中、1月27日に政府は「まん延防止重点措置」を34都道府県に適用、期間は2月20日までとしました。栃木県も新規感染者が4日連続で600人を超え過去最多を更新しています。そのため足尾の森作業も、スタッフ・サポーターの大事をとって中止をしました。

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(みちくさの庭で雪に埋もれるリンドウ)

 先日、毎日新聞(1/27朝刊)で「植物の力でコロナワクチン開発」と報じられていました。それは、「植物から抽出して抗原するもので、低コストで短期間に大量生産、冷蔵輸送が可能。すでに、カナダで承認申請され、日本でも臨床試験を実施中、今春にも厚生労働省に承認申請し、2022年度に実用化を目指す」としています。

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(2022年1月27日 毎日新聞朝刊より)

 日本でも昔からの知恵として、アオキ、ナンテン、ウメなどが薬として利用されてきました。足尾のクマも冬眠から覚めたら柳の芽を食べると聞きました。鹿や猿も木の皮を剥いで舐めています。

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 4月頃に広がる田園風景に点々と白い花のコブシの木が目につきます。そのコブシの蕾を干したものが頭痛、歯痛、鼻炎の薬効として用いられてきました。また、ホオノキやヤナギなどの樹皮は喘息や頭痛薬として実用されています。

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 (松木の杜・コブシの蕾)

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 (松木の杜・馬酔木)

 それは、森と共に暮らしてきた先人たちが「森の恵み」をいただく中で見つけてきた「生きる知恵」なのではないでしょうか。「良薬口に苦し」とも言われますが、苦みや渋み、舌先に感じる痺れ、匂いなど、人間が持つ「五感」も磨き上げてきたのだろうと思います。

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(みちくさの庭・ミント)


 コロナ禍で人との接触が制限され、ストレスの多くなった現代社会に生きる私たちですが、足尾の森作業に入り、木々に触れ、土を耕していると、普段は気づかない、風に乗って聞こえる沢の音や鳥のさえずり、木の葉や土の匂いなど、感性が研ぎ澄まされてくることを感じます。

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(民集の杜・2015年旭川MS会植樹)

 目に見えないウイルスの出現は、私たち大人に子や孫と一緒に自然に触れ森を大切にする心を育むことや、未来につながる人間の持続的な生存を可能にする自然環境を健全にしていく事が最も大切なことだと気づかされます。

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(臼沢西の植樹地を整備する強者たち)

 私たちにとって、「コロナワクチン開発」は、朗報には違いありませんが、人間のいのちの問題なので安全には細心の注意を払って、研究開発を進めて欲しいと願っています。

(運営委員 大野昭彦)

2022年1月27日 (木)

マレーシアで考えた持続的な開発

 前回、この欄に投稿してから3ヶ月、世の中変わらないのはコロナだけ、いや新型コロナウイルスは変異株のオミクロン株になり、さらに大変なことに。長野でもとうとう「まん延防止措置」がこの27日から始まることになりました。

 そうしたなか、2年前のちょうど今頃、マレーシアの義弟のところへ義母を伴い、10日ほど遊びに行っていたのを思い出しました。写真は現地のマーケットですが、今見ると誰もマスクをしていないのが奇妙に感じてしまいます。あの頃は平和でしたね。

1 向こうで感じたのは、とにかく人々がパワフルで、エネルギーに満ちていること。出歩いたのはクアラルンプール周辺とマラッカだけですが、土木工事はあちこちで行なっているし、都心の電車は10分おきにくるし、街中は夜中まで人で溢れていました。

 調べてみると、2020年の平均年齢はマレーシアが29歳、日本は48歳。私は日本の平均年齢を大きく押し上げているのですから、下手なことは言えませんが、まあそういうことです。

 もちろん問題もたくさんあると思います。多民族、他宗教国家ですから、それだけでも大変。また、空港へ降りるとき目に入るのが、アブラヤシの見事なまでの一成林。この実から精製されるパーム油は手頃な価格の植物油脂として、日本でも食品や化粧品など多岐にわたって使われています。世界での生産は85%近くがインドネシアとマレーシア。需要の拡大と農園のため伐採される熱帯林の現状を考えれば、持続的な生産と消費者側の賢い消費が求められます。パーム油に関してはRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証がありますが、こうした取組みの進展を期待しています。

 マレーシアでは計画的な首都機能の移転も行われています。現在ではクアラルンプールから25キロほど離れたプトラジャヤへ多くの政府機関が移りました。写真は首相官邸です。

2 この土地にはもともとアブラヤシ農園があったとのこと。周辺には自然に囲まれた先進的な官庁街が整備されており、政府は低炭素グリーンシティを目指すとしています。写真のピンクモスクでは多くの人が礼拝に訪れていました。

3 環境問題を考えるには、国内だけでなく世界の状況へも目を配りたい。そのためには、他国を見るのも大きな手助けになります。まあ、そんなのは屁理屈で「海外へ行く自由が欲しい」というのが私の本音ですが。ちなみに冒頭に記した義弟はその後インドネシアへ転勤となり、日本には一度も戻れずにいます。(運営委員・井上 康) 

2022年1月24日 (月)

自然界に存在するあるがままの自分を知る森づくり

 今年の足尾松木沢は雪が多い。15年間以上も足尾松木沢に通っていた私の記憶でも初めての降雪。木を植えている森の草木にとっては有難いことにつながっているのか。春から夏にかけての草木の息吹が楽しみ。Img_2912 苗木を植える前の乾燥していた草地にはビロウドモウズイカ、セイヨウノコギリが目立っていた。今では探さないとその姿は見えない。除草したわけではないので、生きていく環境が合わなくなってきたと思う。

P6295440   ビロウドモウズイカ

 今年、足尾の森づくりでは植物遷移を体感することができないかと、石や岩の上で地衣類が生えている場所に苗木を植えていく。植える苗木は空気中のチッソを吸収できるヤシャブシ、ハンノキ等。植えた木々の生長と植物の芽生え、地衣類の生長と他の生物の観察を行っていく。P4112637

P1273258  土壌改良をせずに、砂と石ころだらけの状態での植物遷移が体感できるのかは不明だが、植物遷移の概念を身体で感じていきたい。気の遠くなる時間がかかると思うが、人間が自然界の一員であり、かつ消費者に過ぎない存在であることを実感できることを願って始めていく。(顧問 高橋佳夫)

2022年1月16日 (日)

ファンクラブの飛躍に向けた抱負を語り合う

 今年は寒気が日本各地を覆い、各地では例年にない雪が降っています。本日(1/15)は、久々に青空が見える天気に恵まれ、今年第1回森びと福島県ファンクラブの打ち合わせ会議を福島市内で行いました。新型コロナ感染拡大等でなかなか会えない森ともの仲間たち6名の感染予防対策での集まりでした。

2022115 今回はオンライン会議を試してみました。しかし、初めてのことでしたので基本設定がうまくいかず四苦八苦しました。30分遅れで会議は始まりました。オンラインでは森びと高橋顧問からの問題提起だけにとどめ、議論はその後行いました。「久しぶりです。みなさん元気ですか。」の一声に、久しぶりに会う出席者の表情に、慎重さが見えました。

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2022115_3髙橋さんからは、脱炭素社会を生き抜くためには、地球全体のシステムを調整する機能を健全にする活動をしていくことであり、地域でできる事を実行し、地球温暖化防止に向き合うシニア世代のアクションの大事さが話されました。

その後、今年度の福島県ファンクラブとしての事業計画について議論を深めあいました。➀森びと福島県ファンクラブの規約の見直しの議論及び総会までの計画について、規約見直しなどを決定する総会の日程と場所を決定して、会議は終わりました。

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2022115_6  桜井勝延さんは市長選で頑張っています 

本日参加された森ともの皆さんお疲れ様でした。また、問題提起していただいた森びと顧問の高橋さん、オンライン会議を操作していただいた小林さん、ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。(森びと福島県FC代表 東城敏男)

2022年1月13日 (木)

森とともに生きる活動をスタートさせる2022年

 2022年、新年を迎えることができました。今年もよろしくお願いします。

 気候変動による異常気象は、毎年巨大化し、無関心ではいられない現状です。地球温暖化にブレーキをかけていくためには、二酸化炭素を吸収してくれる「木」を植え、森に育てていくことが必要です。やれることは小さいことかもしれませんが、人間は森とともに生きることを確認し、できることを拡げていきます。

202162005_2 2005年に植樹をした臼沢の森入口(2021年6月撮影)

 私が住んでいる鎌倉市は、植林地が33%と緑が豊かです。緑地は、生物多様性の確保や防災の役割もあるとともに市民が自然に親しむ貴重な場所です。現在、市民団体が手入れをしている緑地や里山があります。それらの人たちと自然環境の保全を一緒に活動ができていければと思います。

3_5昨年の熱海市での土石流による被害

Photo_4 神奈川県ファンクラブは、一歩一歩“山と心に木を植える”活動を拡げていきます。

(神奈川県ファンクラブ・増田富雄)

2022年1月11日 (火)

自然と人の豊かさを象徴する伊勢神宮の森

 昨年の話になりますが、伊勢神宮の神宮道場でお話をさせていただく機会があり、久し振りに内宮と外宮に参拝してまいりました。どちらも鬱蒼とした照葉樹の森に覆われていて、神が宿る神聖な場所であることを確信させてくれます。内宮の五十鈴川も祀られていて森と川の一体感は、美しい日本の原風景でもあります。

Photo伊勢神宮内宮の社殿と鎮守の杜

 私は植生学者なので、自ずと森に目がいきますが、森の主役はイチイガシです。日本の照葉樹林は沿海部のシイ・タブ林と内陸のカシ・モミ林に分けられますが、内陸のもっとも肥沃な土地に成立するのがイチイガシ林です。そのような豊穣の土地に伊勢神宮が祀られているのは偶然ではなく、自然と人の豊かさの象徴であるということです。参道から森を覗くとヤブツバキ、サカキ、ヒサカキ、カクレミノ、トキワガキ、バクチノキ、ヤマビワ、コバンモチ、カンザブロウノキ、ミミズバイ、バリバリノキ、イズセンリョウ、ハナミョウガ、ホソバカナワラビなど植物相もなかなか豊かで、長い年月を経た自然林でないとこのような種の多様性は保てないのですね。

Photo_3伊勢神宮内宮のイチイガシ

 

 私の知る限り、福岡の太宰府天満宮と大分の宇佐神宮にもイチイガシ林があり、豊かさの象徴になっています。伊勢神宮を始め、これらの境内にはクスノキの大径木もあって、ご神木になることも多いのですが、クスノキは中国か台湾から持ち込まれた樹種で、成長が速く立派になるのですね。

(運営委員会代表 中村幸人)

2022年1月 8日 (土)

日光・「城山の森」で100年後の森の夢見る

Photo_7 明けましたおめでとうございます。私たちが育てている日光市「城山の森」の新年を迎えた様子をお届けします。昨日、私と大野さんで「城山の森」に行ってきました。

Photo_9 登山入り口からの階段を登ると、途中、散歩している初老と思われる二人とすれ違いました。午後3時過ぎに、弱い寒風吹く中を、杖をついて散歩している二人を見てびっくりしましたが、「こんちは」とあいさつをして別れました。

Photo_11 そこから少し先を登ったところがその森です。私は、足元の霜柱の土壌で育つ苗木を見て、スクスクと大きくなっていることに確信をもちました。今年も、苗木はウサギやシカなどの獣害に遭っていませんでした。稜線から見る雪化粧の女峰山、男体山などの景色が最高の癒しになりました。この苗木たちも春になると若葉が輝き、散歩する方々の元気の素になることでしょう。Photo_12 やがては全ての生物の命の営みに欠かせない小さな森になってくれるでしょう。そんなことを二人で話合い、春からの育樹作業の計画を話し合うことにしました。

頂上付近で、新春の句を詠みました。

★寒中に きりっと春待つ 城山桜(春吾)  ★ 凍空に 城山の樹々 待つ頂芽 (昭彦)Photo_13  お粗末様です。(報告 加賀春吾)

2022年1月 6日 (木)

原発増設前提で走るEV車は本当に人に優しい?

 吹雪の日は本や新聞を乱読して時間をつぶしている。新年早々気になることがある。世界各国で「脱炭素社会」へ向けた様々な技術競争が行われているが、その社会には人の生命が第一ということが置き去りにされている気がしてならない。Photo ウォークマンでビートルズ曲を愉しんだ私だが、その商品製造会社グループが電気自動車(EV車)を設立するという。その他にもアップル、グーグルも参入するのではないかと新聞報道されている。EV車は「脱炭素社会」のシンボルとして注目され、世界市場では「戦国時代」を迎えているという。Dscn9088  EV車はガソリン車よりも部品が少なく、製造技術的にも障壁が少ないという。モーターは電気で稼働し、二酸化炭素を排出しないので地球には優しい。しかし、例えば、日本の全乗車すべてをEV車に置き換えられると、モーターを動かす電気を賄うには100万㌔㍗原発が10基、50万㌔㍗火力発電が20基の増設が必要になるという。(経済産業省の試算)Photo_2  こうした中で、EU欧州委員会は、「原発には脱炭素社会へ移行する促進の役割がある」という考え方を加盟国へ提案した。各国の「脱炭素社会」は潮流には危険な考え方が潜んでいるようだ。P1030925  誰もが格差の無い、安心して生活できる平和な社会という理念は「脱炭素社会」像には見えない気がする。ビニールハウスで野菜・果物を生産している農家、軽油や重油を燃料とする漁船の行方を心配する漁漁師、エンジンよりも部品が少ないEV車であれば部品製造を担ってきた労働者の雇用が不安、AIが労働現場に浸透・拡大する中で雇用不安が止まらない学生などの気持ちを考えると、気が収まらない。202112  新年早々の私の気持ちは、ビートルズ曲やボブディラン曲をウォークマンで聴いていた当時の社会変革エネルギーを再び燃やすことはできないものか、だつた。レコードを聴いて、その作戦を練ってみる。(顧問 高橋佳夫)