2020年9月20日 (日)

自然薯の恵みを共有できる喜びを味わいたい

 今の夏も酷暑で農作物生産に影響が出て、一部野菜が高騰した。我が家の柿も落ち始めている。大雨被害が遭った地方では肥沃な土がダメージを受け、住宅の不安や森が衰弱している。

202009  毎年梅雨があるように、大雨や暴風が毎年大暴れしている。人や生きものたちの命を育む営みのリズムが狂ってきていると思う。今までの暮らしのリズムといった日本人の当たり前の四季が変化している。 

202009_2  私の若い頃は、晩秋の訪れを楽しみにしていた。葉が枯れて落ちないうちに、その弦に目印をつけていたのが自然薯。今頃の時季は、枯れた弦に付いている「ハナタカメン」を探し、それに唾を付けて鼻の上に乗せて遊んでいた。弦に、ムカゴが付いているとラッキーで、家で美味しくいただいた。 

Dscn3523  乾いた土が好む自然薯だから、雨水が溜まらない所の自然薯を探していた。古希を過ぎて、実家付近で自然薯探してみたいと思っているが、想定外の異常気象で自然薯か好む土壌が心配だ。

20200921  コロナウイルスに負けない免疫力を付けていくためにも良いのではないかと、自然薯の恵みを頂きたいと思っているが、自然界のしっぺ返しは半端ではない。数年かけて食べ頃に生長し、私たちの免疫力を恵んでくる自然薯。その生長の土台を壊している人間の暮らしと経済活動。自然薯の恵みを継続していくためには、周囲の森を元気にしていくことを考え、できることを実行していきたい。

Photo  貴重となった自然の恵みを掘ることができたら、仲間たちとその恵みに感謝したい。(森びとAD・松井富夫)

2020年9月11日 (金)

「公害の原点」を「未来の財産」へ。源流の森を育てよう!

 渡良瀬川下流、かつて田中正造が鉱毒被害民と共にたたかった“谷中村”のある渡良瀬遊水地で、5月末にコウノトリが二羽誕生しました。ヨシ原の広がる湿地帯にエサとなるドジョウやカエル、小魚、ミミズなどが増え、生態系が回復してきていることがわかります。8月には巣立ちが確認され、遊水地内や付近の田んぼで生活を送っており、あと1カ月ほどで親の元を離れ飛び立っていくといいます。

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 谷中村民の暮らした場所には、大きく生長した桑の木が生え、実生も多く生えています。当会が2016年に開催した「足尾・ふるさとの森づくり」に渡良瀬遊水地のある野木町の「野木町煉瓦窯を愛する会」の皆さんが参加。会の皆さんが育てた桑の幼木を、養蚕が盛んだった旧松木村・「民集の杜」に植樹してくれました。

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 現在、大きなものは2mほどに成長し、6月には桑の実を付けました。「民集の杜」内では入口付近の桑の木に実が鈴なりとなり、熊が食事に来ていました。

 

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 一度壊した自然を取り戻すには、多くの人間の努力が必要です。緑(木々)が増えるにつれそこで暮らす虫や動物、風などが加勢してくれることを15年の森づくりで学んできました。渡良瀬川源流部と下流の自然が少しずつ回復していますが、気候変動はその回復のスピードを超えて進行しています。

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 9月9日、環境省の有識者会議は地球温暖化に対する「評価報告書」をまとめました。

コメの収穫量やマグロの漁場に変化が生じ、豪雨で物流や製造業の被害も増大するなど、評価した70項目のうち7割程に「特に重大な影響」が及ぶと予測し、政府に強化対策を求めています。台風の勢力増大などによる河川の氾濫や、高潮による浸水リスクが高まると分析。損害保険金の支出が膨らみ、商業施設や工場の休業、サプライスチェーン(調達・供給網)の寸断による損失が増える恐れを指摘。熱中症の死者や救急搬送はさらに悪化すると予測。今世紀末には東京と大阪で「日中に屋外で働ける時間が今より30~40%短くなる」と見積もっています。

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 コロナ後の世に「経済回復」を急ぐあまり、温室効果ガス排出が増大しては本末転倒です。

9月4日(1913年)は田中正造翁の命日でした。「公害の原点」と呼ばれた足尾の荒廃地を「未来の財産」とするために、1本でも多くの木を植えよう。

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(筆者 清水 卓)

2020年8月30日 (日)

生物社会から学ぶ人間社会の常識

 足尾で森作業しているとカラスやモズの雛が親に餌をねだる声が聴こえる。餌の虫は木々の葉を食べている。その虫を採って雛に与えている親鳥。葉を食べている虫が鳥の命を育んでいる。と同時に、鳥は虫の害から森を守っている。私たちの森作業と同じような作業をしている。

Photo  足尾にもオオスズメバチが飛んでくる。刺されると命が危ないので人間にとっては厄介な蜂だ。養蜂家にとってもニホンミツバチを襲うスズメバチは厄介だ。ところがオオスズメバチは日本の森を外来種から守っているという。

Photo_2  長崎県対馬島内には中国からツマアカスズメバチが飛来している。このスズメバチの侵入を妨害し、生息地拡大に抵抗しているのがオオスズメバチ。ツマアカスズメバチの天敵として奮闘しているという(国立環境研究所・五箇公一氏)。厄介な蜂だと思っていても、生物社会のなかでは重要な役割を果たらしている。森と人と蜂(虫)のつながりが嬉しい。

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Photo_4 中倉山

 悲しいかな、人間社会では生物社会の協働作業が見えない。誰もが待ち望んでいる新型コロナウイルスのワクチン開発。各国で莫大な税金が開発企業に投入されているが、商品が開発されれば、その開発会社は独占的に利益を得る。ところが貧しくても税金を払った人たちにはそのワクチンが手に届かない。今になってもPCR検査は有料な日本。(理事・高橋佳夫)

2020年7月30日 (木)

森びととしての「グリーンリカバリー」を今後も進める

 古代中国で考案された季節を表す方式の七十二候によると、7月28日~8月1日頃を土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)と言うそうです。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、マスクをすることが、あたりまえになり、不快な日々、不安や恐怖を感じて日々生活をしているのではないでしょうか。とかく滅入りがちですが、「うつらない・うつさない」よう予防をしながら、日々を過ごしていきたいものです。

20200729_160744_2 先日、当会顧問の山崎誠衆議院議員が、日経新聞のインタビューとして再生可能エネルギーについて、コロナ後の社会をどのように再興していくか、その際のエネルギー政策の重要性を訴えている記事が掲載されていました。世界ではコロナ禍からの復興をグリーン政策で実現しようという「グリーンリカバリー」という政策パッケージが提起されています。脱炭素社会の実現に向けた投資により経済の復興を実現、その柱になるのが再生可能エネルギーの利用拡大、再エネ100%を目指す動きです。日本も当然、この世界の潮流に乗っていかなければなりませんが、安倍政権はいまだに原発、化石燃料依存から抜け出そうとしていません。再エネを拡大するといっても目標設定が間違っているために投資も伸びず、結果として世界から大きな後れをとっている状況です。立憲民主党ほか野党が提出した原発ゼロ基本法では、明確に2030年に再エネの比率を40%以上、原発ゼロの方針を明記。さらに現在はCO2を大量に発生する石炭火力発電もゼロという目標を掲げて政策を取りまとめているそうですので、実現させていきたいものです。20200730_063210_2

 新型コロナウイルス感染拡大は、生態系の破壊や気候危機によるものが多いと思います。例えば、都市中心の社会、行き過ぎた新自由主義による格差拡大、大量生産・大量流通に依存していることが挙げられます。中央集権的なシステムから地域分散型のシステムへの転換が必要だということです。私たちは特効薬がない中、新型コロナウイルスもそうですが、未知の感染症と共存していくしかならず、頻繁に甚大な自然災害が襲うことも考えられます。まさに、日本も世界も大きな歴史の転換点(パラダイムシフト)にいると言わざるを得ません。

Pb110161_2 私たち森びとの「グリーンリカバリー」は、まさに森づくりであり、全ての生き物の生存を危ぶむ地球温暖化にブレーキをかけるために、今後も愚直に森づくり運動を進めていきます。

20190723_193101_2(東京事務所・小林敬)

2020年7月18日 (土)

生きものたちの命を育む地球を元気にしたい

 私が住んでいる府中市の西府には東京名湧水57選のひとつがある。府中崖線にある貴重な湧水の水量は少ないが、枯渇していない。東京都は、都市化の影響などで枯渇や水質悪化が進んでいる中で、武蔵野台地の末端部にある崖線沿いや多摩丘陵の谷戸等の湧水は貴重な湧水としている。調査活動をしているNPOの役員によると「沸かして飲めば災害時などの飲料水として使用することが出来る」と述べている。森の恵みで育った私は、水を買って飲む時代が来るとは思っていなかった。今は私も水を買って飲んでいるが、時々、足尾の森作業にスタッフが持参する沢水を頂くと、幼い頃の美味しい水の味を思い出す。 

Dscn2802 写真:みどり市・大木さん

「令和2年豪雨」(7月~)は九州地方をはじめ各地で甚大な豪雨災害をもたらした。大切な水が地球温暖化の影響で暖められ、線状降水帯となって豪雨が襲い、尊い命や財産を奪っている。被災した皆さまにお見舞い申し上げます。今回の豪雨は東シナ海の海水温度が上昇し、大量の水蒸気が前線に流入し、記録的な降水量になった。運ばれた水蒸気を水に換算すると毎秒約40万立方㍍で、アマゾン川の約2倍に相当すると報じられている。水は生活に欠かせないものだが、記録的な豪雨は命や財産を奪う恐ろしい水に変身する。自然界からの警告として受け止めたい。

Dscn2034 写真:みどり市・大木さん

 人類が共有すべき天然資源(水)なのだが、日本の美味しい水を買い占める外国の資本が忍び寄っているらしい。何十年、何百年の時間をかけて育てたミネラル豊富な水は、森が作っている。森を護り、育てている日本人の“森に寄り添う文化”は金で独占されてはならないと思う。人間が自然界を支配できるという思い上がりを改め、森に寄り添って生きる社会へ舵を切らなければならない。

Dscn6053 写真:みどり市・大木さん

 新型コロナウイルス感染の猛威で思い知らされていることは、自国ファーストや経済優先ではなく、「生命第一」のための事業を、世界の人々が心をひとつにして連携していくことだと思う。私も、足尾でその情熱を燃やしていく。(森びとAD・松井富夫)

2020年7月10日 (金)

愛する家族のため、世界の人々のために、いのちを守る森づくりを!

 梅雨前線の停滞が長引き、九州地方や本州で豪雨被害が発生しています。
 気象庁は9日、活発な梅雨前線の停滞により北海道や沖縄を除く全国で少なくとも12日まで大雨が続く可能性があると発表しました。降り続く雨で各地の地盤が緩んでいるとして「次に大雨が降ればどこで災害が起きてもおかしくない」と警戒を促しています。
7月3日から9日午後5時までの総降水量は鹿児島、高知、和歌山各県で、1000m超、長野県で900mを超えるところがあるなど記録的な雨となっています。(7/10毎日新聞)

 この豪雨は川を増水させ氾濫。多くの住宅が水に浸かり、未明の増水によって犠牲者が多く発生しました。山の斜面の森や土壌は許容することのできる水量を超え、植林された樹木ごと土砂が崩れ落ち、山の麓の家屋に流入し住民が犠牲になっています。この痛ましい事態に胸が苦しくなります。被災された皆様にお見舞い申し上げると共に、犠牲となられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

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   【7月8日 毎日新聞】

 熊本県南部を襲った猛烈な雨は、九州を東西に横断するように停滞していた梅雨前線に、南西の東シナ海から暖かく湿った空気が流れ込み、西側の海上で積乱雲が発生。前線に沿って「線状降水帯」が形成されたことが原因だといいます。地球温暖化が進めば更に海水温が高くなり、豪雨災害のリスクが高まることは目に見えます。海水温の上昇は日本だけの問題ではなく、世界の問題です。

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   【7月8日 毎日新聞】

 二酸化炭素を大量に吸収し、地球温暖化の抑制に欠かせない存在として「地球の肺」と呼ばれる南米アマゾン川流域に熱帯雨林があり、その広さは550万平方キロにのぼります。  
 現在、そのアマゾンの森林破壊が加速しているといいます。「熱帯雨林の6割を占める南米ブラジルでは、新型コロナウイルス流行の影響で、環境保護当局の警戒が手薄になったすきを突いた違法な開発も加速しているとみられています。ボルソナロ大統領の環境軽視の姿勢が、違法な野焼きや森林伐採、鉱山開発などを助長しているとの指摘もあります。火災による消失も含め熱帯雨林の破壊は深刻さを増し、19年度の破壊面積は1万896平方キロに及び、過去11年間で最悪レベルに達した。」(6/28毎日新聞より)といいます。
 そして、昨年9月から今年1月に発生したオーストラリア火災では10万3千平方キロ(1/11時点、日本の国土面積の約4分の1以上の大きさに匹敵)にも及ぶ森林面積が消失しました。
 「自国ファースト」の結果は、自国民のみならず、世界の人々の生活を脅かせています。今こそ、地球温暖化ストップ!いのちの森づくりへ舵を切らなければなりません。

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 先日、小黒事務局次長からうれしいニュースが飛び込んできました。「ダボス会議」で知られる「世界経済フォーラム」の動画で、当会最高顧問の宮脇昭先生の森づくりが紹介されているということです。『気候変動の秘密兵器は小さな森づくり。宮脇の森は今ではヨーロッパ各地でも数多く作られているのだとか。世界に広がる森づくりの輪。日本の森づくりも負けちゃいられませんね。』と当会HP「森の風だより」で紹介させていただいておりますので、是非ご覧ください。

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 2004年宮脇先生と荒廃した栃木県・足尾銅山跡地の現場に立ち、「一番困難な場所で森づくりが出来れば世界のどこでも森づくりが出来る」と、「いのちを守る本物の森づくり」がはじまりました。40㎝ほどの幼木が現在では12mにも生長し、落石を防ぎ、降雨を葉で受け止め根で蓄え、水源涵養、土砂流出防備林として森の機能を発揮し、多様な生き物が暮らす森へと生長しています。

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 宮脇昭先生は著書『人類最後の日』の末尾に「今こそ、新しい科学、特に生態学的な自然観、知見をもとに、人類生存の母体としての緑—いのちの森―を足もとから、明日に向かって、共に学び、創って戴きたい。君のため、君の愛するご家族のため、日本人のため、七十億人を超えた世界の人々のために、本気で取り組む皆さんとともにいのちのある限り、私は続けます。」と記しています。

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 各県で活躍する森びとインストラクターの皆さん、森とものみなさん。自然災害を防ぎ、多くの人々の命を守るために、地球温暖化防止に向け、山と心に木を植えていきましょう。

理事・清水 卓

2020年6月29日 (月)

森に寄り添って生きてきた先人の暮らしが「新しい日常」の素

 明後日からビニール袋が有料になる。有料でなく使用禁止にしてくれることを願う。私もバックをザックに入れて持ち歩いている。店の袋は新聞紙で作った袋でもよいと思う。半世紀前はそんな生活様式が普通であった。夏休みの暑い日は、インスタントコーヒーに牛乳を混ぜた冷たいコーヒー牛乳を飲めたことが嬉しかった。コップに小麦やビール麦の空洞の茎を刺し、それをストローとしてコーヒー牛乳を飲んでいたことも普通の生活であった。

P5291725  新聞紙はコウゾ、ミツマタ等の木々が原料、コーヒーは木の実、牛の餌は草でその栄養が牛乳なる。元をただせばビニールも自然の恵み。ところがそれが食物連鎖の頂点に君臨する人間の命を脅かそうとしている現代社会。 

P6095864  サバクバッタがアフリカからパキスタン、その後はインドまで移動した。その被害で人間の命が縮まるかもしれない。人口13億人の中国はバッタがヒマラヤ山脈を越えてのツ作物が荒らされるのではないかと心配しているようだ。ウイルス、細菌、虫等の生きものに国境はない。この生きものたちは、人間の無限な貪欲システムに適応して、世界の市場経済を混乱させている。人類には、生活様式の見直しを迫っている。 

P5171429  マイナス68度を観測するシベリアで、先日、史上初の最高気温38.0度を観測した。永久凍土の上に建っていた発電所の燃料タンクが崩れた。アンバルヤナ川に汚染水2万㌧が流出した。原因は偏西風の蛇行で、気温を高くしたという。永久凍土の溶解はメタンや二酸化炭素を排出させ、地球温暖化を加速させる。同時に、ウイルスや細菌を目覚めさせ、バッタ等の生きものたち生息環境をも変えている。

P6061811  こうした地球の悲鳴を聴こえないふりをしている時間はない。ブラジルの環境相は非公式な閣議で、メディアはコロナ関連のニュースがメインだ、このタイミングを利用して熱帯雨林の環境規制を簡素化すべきだ、と発言している(『毎日新聞』6/28)。

Photo  日本政府の「新しい日常」はコロナ対策に便乗した経済優先(「質の高い経済」)が本音らしい。面倒な行政窓口の手続きがデジタル化で簡素化されると有難いが、その核心は、運転免許証や健康保険所等が「マイナンバーカード」に集約することだという。市民の個人情報を丸ごと政府が管理し、デジタル化は職員たち雇用不安を生み、働き方改革(テレワーク等)は働く者たちの雇用不安を孕んでいる。 

P7133372  コロナ渦は小さくなって、静かな日常に戻るのかと思っていたらそうでもない。むしろ新型コロナウイルスが大好きな宿を世界各国に増やし、コロナ以前の経済活動に戻っている気がする。これでは「新しい日常」とは言えない。古い様式が新しく感じる社会が目の前にある。古新聞紙や手ぬぐいの再利用、メイドインジャパンの商品は大歓迎。先人の森に寄り添う暮らしの文化をブラッシュ・アップすると「新しい生活様式」が見えてきそうだ。(理事・高橋佳夫)

2020年6月22日 (月)

「新しい日常」のヒントは先人が築いた暮らし方の中にある

 東京での新型コロナウイルス感染者数が一桁台に減らない。アメリカでは経済の活性化が感染拡大と関係があるのか不明だが、全米50州のうち西部カリフォルニア州や南部フロリダ州をはじめとした21の州で、1日に確認される感染者の数が増え続けている。

Photo 写真:宙ガール

 ブラジルの感染拡大は政治の問題が大きいが、いわゆる先進国の感染者数が減らないことが不安だ。政治の問題は色々な方々から言われているので、新型ウイルスと向き合う己の課題をまとめている。

そのひとつに挙げたいことは、「新しい生活様式」、「新しい日常」、「ウィズコロナ」に孕まれている、その危険な事とは何かだ。世間では、新型ウイルスに感染しない方法だけに目が向けられている気がする。

P7163433 足尾の精錬所跡

 感染防止の労働現場の見直しが社会へ浸透している。経営者からすれば固定費削減につながるテレワーク、オフィスビルの多様化等など。経営者だけがウハウハになる社会の到来か。自民党も行政上の手続きをネット化、そのための5G推進に懸命になっているようだ。テレワークが新しい働き方であれば、それに相応しい労働環境を整えなければ労働者間の格差が拡大されるのではないかと心配する。

P5251559 コウゾの花?

 利益が伴わない市民のボランティア活動では、インターネットを上手く活用していければ活動にゆとりがでてくる。自分たちだけの殻に閉じ込まることなく、世界の地球人との連携を募り、全ての命を育む土台(基盤)を元気にさせたい。「新しい」ということの本当の意味は、先人が築いてきた森に寄り添って暮らすという“本来の生活様式、もともとの日常”ではないか。これらを社会の常識に執りもどすことが筆者の課題のひとつにしている。

20200621_133837 足尾の荒地に芽をだした蕎麦

 (理事・高橋佳夫)

2020年6月10日 (水)

アカシアの恵みは分け隔てなく届けられる

 足尾の春は遅い。足尾に転居する前の花見は4月上旬だったが、足尾ではGW前後が花見だった。花が終わると新緑を迎えるが、その新緑の中に黒みがかった幹や枝が目立つ足尾の山々。立ち枯れてしまったのかと心配すると、黒っぽい枝に薄化粧したような白い花が咲きはじめる。それはニセアカシアであり、甘い香りは足尾町まで届く。2  銅山から出る亜硫酸ガスや火災などではげ山となった荒廃地に植えられたのがヤシャブシやリョウブ、そしてニセアカシア。これらの木は、空気中の窒素を根粒菌に取り汲んでもらう。荒れてやせた土地に植えるには最適な木がニセアカシア。どうして芽吹きが遅れるのかは分からないが、多くの生きものたちがこの花を待っている。Photo_2 この香りと甘い蜜を待っているのが、蜂と猿と人である。花の香りは甘く、目を閉じていると夢の世界にいるような気になってしまう。食べたことがないが、町民は「花の天ぷらがおいしい」という。この時季、ニセアカシヤに猿の群れが集まり、あちこちで花びらを食べている。蜂もせっせと蜜を吸い、養蜂家に貴重な恵み授ける。それは蜂蜜の最高級品と言われている。Photo_3

Photo_4  人間の欲のために壊してしまった森。草木を甦らせようと植えたアカシヤが森を壊した人間にに”恵”を与えている。木々は人を差別せず、恵みを等しく分け与えている。森は人間の生活の在り方を教えているようだ。

 今、新型コロナウイルス感染で世界中が大騒ぎとなっている。地球温暖化が進み、開発による環境破壊が進めば、新たなウイルスがまた出てくると言われている。「複合災害」を防ぐには、温暖化にブレーキをかけることとともに、私たちの生活スタイルを根本から見直すことを始めなければならないと思う。(足尾スタッフ・橋倉喜一)

2020年5月30日 (土)

コロナ禍1人では弱いけれど、仲間がいれば乗り越えられる

今月 25 日に、緊急事態宣言が全国すべてで解除されました。自粛生活の終わりや経済活動の再開を期待する一方で、新型コロナウイルスの終息が見えないことへの不安の声も聞かれます。人類は新型コロナウイルスに対して未だ武器(感染を防ぐワクチン、発症を抑える治療薬)を持ち合わせていません。この武器が完成しなければ、残念ながらこの闘いは暫く続きます。

20200415_145111 今回の新型コロナウイルスは、行き過ぎたグローバリズムによって全世界に急速に拡がっていったと思います。歴史を見ても、人間は生活を豊かにしていくために世界中で動物の生
活圏へと入り込み、自然を破壊する行為をしてきました。そのことへの反動としてのウイルス感染であり、頻発する自然災害に対して人間は無力であることを実感しています。

91 そして、ウイルスの恐怖に怯え、パニックになり、食料品やマスク・トイレットペーパーなどの買い占めや転売が起きた報道を見ると、周りが見えなくなり、誰しもが自分ファーストに陥ってしまう弱い面を持っていることを感じました。20200530_202449_2
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また、マスク不足が深刻になって肌で感じたのは、日本では資源の多くを輸入に頼っているということです。農水省の HP によると、平成 30 年度の食料自給率は、カロリーベースで37%、生産額ベースで 66%となっています。海外依存からの脱却や他県からわざわざ環境に負荷をかけて経済を回すことなく、地域でヒト・モノ・カネを循環させ、雇用やコミュニティ―を生み出すことが必要だと思います。そのためにも、長い目で見て、ウイルスと共存共生していく現実を受け入れて、○○ファーストではなく、周りの人と協調し、他人の心を思いやりながら共に支えあう社会づくりを模索していきたい。
1526855090183_6 (東京事務所・小林敬)