2018年4月28日 (土)

地球人の暮らし方は森の中に潜んでいる?

5月19日に開催する第37回「足尾・ふるさとの森づくり」では“ゴミを極力無くす”考えのもと、昼食は今までのように弁当ではなく、おにぎりとおかず、汁物、デザートの提供をしていきたい。僅かなことかもしれませんが、このままの暮らしを継続いていくと巨大化する異常気象によって人類の生存が脅かされるかもしれないことを考えていただくそのきっかけにしたいと願っている。昼食後のトーク&トークでは、地球温暖化にブレーキをかける森づくりと暮らしについて宮脇昭先生と話し合っていきたい。参加者のご意見に期待したい。

Photo  ところでトランプ大統領は「パリ協定」から離脱したままたが、アメリカ・ワシントン州シアトルのレストランでは、今年7月1日からプラスチック製のストローやフォーク、スプーン等を消費者に提供しないらしい。また、MLBやNFLでのスタジアムでもそれらは廃止になり、スターバックスでも徐々にそのように移行していくらしい。

2_2  アメリカでは毎日5億本のストローが消費され、そのほとんどが処分され、その一部の行き着く先は鳥やウミガメの胃の中という。スコットランドでは2019年までにプラスチックのストローを無くす計画であり、台湾でも2030年までに使い捨てのプラスチック製品を禁止する予定だ。日本でも一部の方々は暮らしに「エコ」を取り入れているが、行政としての取り組みになっていない。

1_2          ミシジンコの一種

 先日、東京大学名誉教授・山本良一氏は「人類に残された時間はあと20年程度。対策を引き延していけば本当に手遅れになる」と地球温暖化への対策を訴え、さらに「北極点の海氷が年々減り続け、温暖化による影響がさらなる温暖化を招く『ポジティブ・フィードバック』は始まる。2012年のスーパーハリケーン『サンディ』、2013年のスーパー台風『ハイエン』は温暖化の影響によるもの。去年の九州北部豪雨では1日に1.000ミリという雨が降った。こうした豪雨がもし関東に襲来したならば、荒川が決壊して都心が水没、壊滅状況になる。そうした事態が起きても不思議ではない」(筆者まとめ)と警告している。

Photo_2  「今だけ、金だけ、自分だけ」という風潮が蔓延る切ない社会、そして浪費が暮らしに蔓延している大量生産大量消費の生活スタイル。けれども多くの方々は、さらに浪費社会を追い求める政治と経済を推進する安倍政権に期待をかけている気がする。私たちは15年前から山本名誉教授のような警告に耳を傾け、地球温暖化にブレーキをかけていくことに向き合っている。樹木の力を借りて少しでも二酸化炭素を削減してほしいと願い木を植えている。しかし、市民の植林活動や良識的な企業の二酸化炭素排出削減策では地球温暖化にブレーキはかけられても世紀末には生存が不安定だ。このまま温暖化が進むととんでもないしっぺ返しがやってくる気がする。政治による大胆な温暖化防止策が求められている。

Photo_3 来月19日の植樹祭をスタートにして、今年は“原発に頼らない 森と暮らす街づくり”へジャンプしたい。体験したことのないライフスタイルとその社会を描くことになるが、そのヒントは命の源である森が与えてくれる。その防止策は世界の森びとの連帯によって実現できる。(事務局 小林 敬)

2018年3月27日 (火)

自然と相思相愛になる暮らしをめざして

24日は夜中まで春雷が宇都宮に響きました。大音量と閃光と振動を、地中の虫や野山の動物たちも感じたでしょうか。「虫出しの雷」とされる春雷ですが、人間にも活力を与えてくれるように聴こえました。1寒さの厳しい冬でした。国内外の極寒や大雪のニュースが気候変動の情報と共に流れ、心身に堪えました。

例年に増して春の到来を感じたくなり、近所の散策にでかけました。

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31「サンシュウ」の街路樹だと初めて気づく)

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(田に水が張るのが待ち遠しい)

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(川の生きものも活発に) 

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散策をしているうちに、冬を自力で乗り超え、誰に教えられることなく目覚める木・花・生きものを、とても頼もしく愛おしく思いました。一方で、人間は自然の前では非力で、こうした自然に守られ生かされている実感と、感謝の思いが湧いてきました。8

25日の第13回総会後の森びらきで、土壌生物学者の青木淳一先生は「生態系は、生産者・分解者・消費者でできています。人間は消費者です。生態系に寄生する弱い存在なのです。」とご挨拶の中で言っておられ、散策の日の実感がよみがえりました。

 仕事や生活に忙しく追われ、車に乗り、電気やガスを使い、スマホを使い、旬に関係なく365日好きな食材を手にしていると、「人間の世界」しか感じられなくなる自分がいます。

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青木先生は「周りの自然に目を凝らしてください」とも呼びかけられていました。

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日々、身近な自然や生態系に目を凝らして人間が一部であることを感じ取り、自然を愛おしく思い続ける心を育てよう、自然界の生きものたちからも愛され感謝される暮らし方をしよう、と心に刻んだ春のはじめです。事務局・唐澤真子

2018年2月28日 (水)

間もなく聴こえてくる足尾の春の息吹に感謝

 一週間後は啓蟄。足尾も足元から春の音がしている。霜柱が“プシュ!プシュ!”と小さな音を出して溶けだしている。

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P3199800  間もなくすると松木川からはヤナギの蕾のかすかな香りが匂ってくる。そうなるとニホンザルの顔がほころんで見える。

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3  3月の朝、森作業に集うスタッフと待ち合せしていると、朝陽に照らされたヤナギの蕾が淡い黄色に輝き、そこに風が当たると花粉が飛ぶ。遠くのヤナギの枝にはニホンザルがこの蕾を美味しそうに食べている。その顔はほころんで見える。

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5  ところで頭痛薬のアスピリンはヤナギの樹皮が原料だというから、ヤナギは人間にとっても有難い樹木だ。また、ヤナギは雄と雌があるとも言われている。ニホンザルはヤナギの蕾を食べて元気をもらっている恩返しに、雄と雌のヤナギを行き来して受粉の手助けをしているようだ。

Photo_3  ♪銀座の柳・・・♪、“柳の下に・・・”と人間の心も和ませてくれるヤナギだが、人間はどんな恩返しをしているのだろう。遠いアフガニスタンでは、中村哲さんが農民のための用水路の堰にヤナギを植えている。虫たちはこのヤナギたち樹木を元気にさせるために、間もなく動き出してくる。春のいのちの息吹が聴こえてくる日が待ち遠しい。(理事 髙橋佳夫)

2018年2月 1日 (木)

人間の営みは四季の移り変わりがベースになっている?

 北東北に住む私の暮らしの節目は四季の移り変わりで判断しているようなものです。この頃は、3月~4月になっても低温や大雪と吹雪などが襲ってくるので、そんな時は命をどのように守っていくのか、と言ったことを考えたりします。北東北に住む者にとっては大雪や寒風など冬将軍の動きに対しては、まずは暖房器具のチェック、冬用タイヤの交換等を済まし、冬将軍と向き合うほかありません。時には、冬将軍が長期間居座るので、その時は憂鬱になります。

Dscn7767          岩手山

 と言っても春になり、森の樹木たちが芽吹くと雪原の白さに疲れた目が癒され、身体を活発にさせてくれます。若葉が眩しくなると緑の葉は生き物たちの餌になり、生き物たちに欠かせない酸素をも供給してくれます。秋になると葉や樹液を提供するレストランになり、美味しい果実をも食べさせてくれます。役目を終えた落ち葉や枯れ枝はミミズやササラダの餌になり、草木になくてはならない土を作ってくれる土壌分解動物たちの働きがあります。

Cimg3598       旧松尾鉱山廃墟跡

Dscn0111  経済や政治も人間の暮らしと同じように、四季の移り変わりと無関係にそのスケジュールはつくられていない気がします。古代インドのアショーカ王は戦争にあけくれた経験の後に、国民にひとり5本の木を植えさせ、この木は未来の世代が使えるように、自分たちで伐ってはならない、というお触れをだしていたそうです。5本の木とは、1本は食べものになるマンゴーやりんごなどの果樹、1本は木材となる木、1本は薬効のある木、1本は花を咲かせる木、最後の1本は燃料になる木でした。多分、この王は人々の心に、未来の世代を思う種をまいていたのだと思います。

Photo  この話を聞いて「なるほど!」と思い、森びとの“山と心に木を植える”という合言葉の意味をもつと広めなくてはならないと思っています。(事務局・鎌田 恒)

2018年1月29日 (月)

森づくり体験が宿る“森とも”の森に感謝!

早いものであと3日過ぎると2月を迎える。昨日(28日)、2004年から当委員会設立の準備、新宿事務所でその後の運営に携わってきた皆さんと語り合った。その2人である当会のアドバイザー・竹内巧さんと岸井成格理事長は病魔と戦っているので、2人の分まで当時の体験を振り返った。

P1012448  筆者も含め集った方々は来年で全員70歳を過ぎる。“地球温暖化を防ぎたい!”と出発した当会の事業だが、体験を振り返ってみると、想像していた運動と体験は同じではなかった。

P1272619  足尾の場合、樹木は想像していたよりも生長してくれたし、その過程では育樹・育苗作業の大切さを体験した。人の都合に合わせた森づくりでは樹木を元気にさせることができない体験をした。

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P1280178  鹿や猿、ウサギ等に幼木を食べられてしまった後の悔しさ、食べられても翌年には食べられた枝の脇から新芽が顔を出した時の嬉しさ、300段以上の階段を上り下りしながら土や間伐材を運び揚げた苦しさ、共に汗を流したスタッフとの悲しい別れ等を体験した。

P1272588  足尾の森、八幡平の森そして南相馬市の森の防潮堤の森には、植林ボランティアの体験が宿っている。これを“森とも”達と共有していくことが次への豊かな想像へ結びついていく気がする。森と向き合ってくると、自然から、“森とも”からそんな力を授かる。

Pc123177  2018年を迎えて、植林地で眺める風景は“森とも”の心を癒し、想像力を豊かにしてくれると思う。貴重な体験をしてきた岸井さんと竹内さんに、集った森びとからメッセージと写真を送った。(理事 髙橋佳夫)

2018年1月 2日 (火)

足尾・松木村跡の森は心のふるさと

Pc149690  暫く足尾・松木沢の松木村跡地に立たないと気持ちが落ち着かず、身体は鈍っていくようだ。特に、12月~2月の間はそのように感じる。

 足尾の森づくりスタッフは「足尾に入ると気持ちが落ち着く」、「松木沢は第二のふるさとだ」という。あるいは、軽トラで3時間以上かけて足尾入りするスタッフは、「長時間の運転は辛くない」、という。スタッフ達はそれぞれが松木沢の森や自然と向き合う方法を描いて集まってくる。

Pc149681  “気持ちが落ち着く”、“心が安定する”ということはどんな情景をさしているのか考えてみた。

 この時季は獣害対策で柵やネットを補強するが、この作業はかなりの労力を必要とする。600段以上の階段を登り、寒風の中、急斜面での補強作業は半端な仕事ではない。また、啓蟄を過ぎると、苗ポット内の草取り、週一回の撒水そして草刈りが始まる。人間の都合ではなく、草木の都合に合わせた森づくりには自己犠牲が伴うのだ。

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Photo_16  この時季、足尾・松木沢は寒い。その上雪が降り、西北からは寒風が吹きつける。朝、作業小屋の鍵を開けて、薪ストーブに間伐材を入れ、火を付けるまでのひと時、ストーブが暖まるまでに箒で床を掃き、お湯を沸かしてホットコーヒーを飲む準備をしている時が何とも言えない。

Photo_10  スタッフが集まるまでに朝陽に照らされる臼沢の森を双眼鏡で観て、鹿や猿、イノシシ等が侵入していないかチェック、道具や用具を保管しているコンテナの鍵を開け、天気状況を簡単にノートに記入する、この時間がスムーズに過ぎると気持ちは落ち着いてくる。

 誰からに言われてやっているわけではなく、森・自然と向き合う作業をそれぞれのスタッフが描き、話し合って進めていけること、樹木の生長はこうした努力に応えてくれていることを実感させてくれる。

Photo_18  この大地には、私たちの短い森づくりの歴史、それ以前の平穏な生活権を奪ったことに対する村人の悲しみ、怒りの歴史が詰まっている。このような歴史が包含された大地の景色や空気、そして風の音や風に運ばれてくる臭いが身体で感じられることによって、心は安定し、気持ちが落ち着くのかもしれない。

森に入り、樹木たちに触れることは、現代の暮らしと社会変革を考える心のふるさとなのかもしれない。(理事 高橋佳夫)

 

2017年11月24日 (金)

異常気象と向き合う本気度が”森とも”から試された

 暦のうえの「小雪」が過ぎましたが、10年ほど前は、普段の暮らしで感じる暦上の季節感が少し早く感じてきました。しかし、この頃は暦通りの季節感が普段の暮らしで感じています。

Pb169529  北海道では40年振りの降雪となりました。また、西日本の降雪は、関東甲信地方よりも早く、その量も多いように思います。また、春と秋の季節間が極端に短くなっているように感じています。そんな訳で、暮らしの営みで衣食住の切り替えが忙しくなっている感じをもっています。 

Pa199241  先日、足尾にて「秋の感謝デー」が開催されました。当会のHPにて紹介されていますので参照してください。昼食後の交流会では、素敵な女性から「国民は5本の木を植えてください。薬になる木、花が咲く木、実のなる木、燃料になる木、そして未来に繋がる木」という、インド国王のコメント話が紹介されました。

Pb189469  この話を聴きながら、人は木に寄り添っていかなければ生きていけないことはインド国王も人々に伝えていたのか、改めて人類は森に生かされていることを実感しました。

Cec  トランプさんの自国の経済優先、安倍さんのお友だち第一に現れているように、人間はこの地球上で一番偉いかのごとくの政治が、暦どおりの季節感にしているのかもしれません。この経済第一という政治の延長線上の暮らしに警鐘を鳴らしているのが「パリ協定」と言えるのかもしれません。  

Pb169525  筆者も足尾の草地に、南相馬市の防潮堤に木を植えていますが、未来に繋がる木を自分自身の心に植え続けているのだろうか、自問自答させられました。

Pa179225  森づくりへの“本気度”が試されている筆者?ややもすると、今までの延長線の暮らしに流されてしまう自分の心に潜む小さな邪悪に負けている筆者の垢を剥していくことが大事だ、と感じました。自然の猛威と向き合っていくと、森と”森とも”はその努力に加勢してくれると思う。

 今年最後の“恩送り日”であった「秋の感謝デー」では、多くの森ともから私の心に木を植えてくれました。ありがとうございました。(事務局次長 水落一郎)

2017年10月26日 (木)

地域に伝わる“自然への畏敬の念”行事を次代へとつないでいきたい

 12月までまだ2カ月ありますが西上州で12月に行なわれる屋敷祭りについて先人の感謝の気持ちなどを連綿とつないでいきたいと思っています。と言っても記憶違いなどありますが、地域に伝わる文化を知ってもらう端緒としてご容赦願います。

Photo  私の住んでいる地域では12月、屋敷祭りを行っています。行われていない地域もありますし、開催日が違う場合もあります。筆者宅では、六曜、曜日にこだわらず12月15日に行なっています。最近では家の敷地内にお稲荷さんのお社を建てるうちは少なくなったと聞いています。お稲荷さん(土地神様)への感謝の祭りが屋敷祭りです。屋敷祭りは地域としての祭りでなく、各家で行ないます。

Photo_2  前段の準備は縄を結うこととオンベロベット(御幣とほぼ同じ)を作ります。これをお稲荷さんのお社のそばに竹と縄で仮社を作ります。お社にはしめ縄を飾り、オンベロべットをしめ縄に挟み、竹にさしたオンベロベットを供えます。当家では縄を結うことができませんし、仮社は作らなくなりました。

Photo_3  当日は日が暮れた頃、北西にあるお稲荷さんに重箱に詰めた赤飯と尾頭付きの鰯を供え、おてのこぼう(ご飯やおかずを手のひらで食べること)で一口赤飯を食べ、お社を振り返らずに家に戻ります。幼い頃から「お稲荷さんが食べている様子は見るな!」と言われています。家族ではけんちん汁を食べながら、お稲荷さんが食べてくれるか等の話しがされました。翌日、お供え物を食べた跡があれば家族の気持ちがお稲荷さんに通じ、跡がなければやり直しです。そして、家庭ではけんちん汁を食べます。

Photo_4  幼い頃からの屋敷祭りですが、12月になると頭に浮かんでくる祭りです。森づくりに参画している筆者は、当家で続けられているこの祭りを絶やしてはならない気持ちでいます。何故なら、森(自然)に生かされている人々からすれば、住を守り、農作物(食)を恵んでくれたお稲荷さん(土地神様)への感謝、そして無事に一年間この地で暮らしてこられたことへの感謝の現れだと思っているからです。自然(森)への畏敬の念がこうした「屋敷祭り」として、活字だけではなく暮らしの中の「祭り」という知恵は大切ではないかと思います。できる限りわたしも引き継いでいきたいです。(事務局 岡部浩之)

2017年10月16日 (月)

森の恵みを現代の暮らしに活かす時代がやってきた

 9月下旬、リハビリを兼ねて能登半島を旅した。天空の旅への誘いがいつ来ても悔いのない終活であるようにと、二人で出かけた。できれば森と生きてきた先人の知恵を改めて学びたいと願って北陸の集落を探索した。

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Photo_2 上写真:ケンポナシ

 合掌造りの集落を歩いているとウダイカンバの葉に似た木が種を付けていたので、葉と実を見ていると通りかかった地元の人から声がかかった。「ここではその木は“テンボウナシ”と言うのだよ!」と教えられた。話を聞いていると、この実は熟すと甘く、集落の人たちは食べていたという。国民宿舎の部屋で調べてみると、その木は「ケンポナシ」という。実は食べられて、酒を飲む前に食べると酒に酔わないというらしい。

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Photo_4  塩田では、昔から伝えられている塩づくりを見た。海水を砂地に撒いて、その砂を熱してろ過し、乾かして塩をつくっているが、塩田の脇には薪が積まれていた。薪は海辺の家の後ろの森を育て、冬になると薪づくりが始まるという。

Photo_5  ろ過は藁で編んだむしろが使われている。現代では化学繊維でろ過されるが、むしろにこだわっている。理由は訊けなかったが、二人は“納豆作りでも藁の力を借りるが、塩も多分そうではないか”とおもった。

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640x480_2  合掌造りでは土台材はクリの木が使われていた。100年以上前に建てられた豪雪地帯の家の造りだが、全ての材が草木だ。柱などの防虫には囲炉裏で薪を燃やし、その煙が虫を寄せ付けないと同時に、二階の部屋の暖にもなっている。

640x576  マンションやビル、新幹線の高架橋、首都高速道路等のコンクリート製建造物の寿命は何年だろう。ニュースでは東海道新幹線、首都高速道路の建て替え工事が報じられている。いずれも東京オリンピック時代に造られた物だから、その寿命は50年程ではないか。

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Photo_6  森の恵みを現代の暮らしに活かしていくことの有難さを改めて実感した旅だった。(理事 高橋佳夫)

2017年9月29日 (金)

森の再生と集まる生き物たちの未来

 足尾は、木を植え続けて13年 “りっぱ”な森ができつつある。ふるさとの森をつくることは、同時に生態系の土台をつくることでもある。例えば、木が育ちその葉に虫がつく、その虫を食べるカマキリなどの肉食の虫が出てきて、その虫を食べる鳥や動物たちが集まってくることなど、食物連鎖の底辺ができることもでもある。Photo_6  植えていないヤマナラシや白膠木(ヌルデ)などの木々が植樹した樹々の間に生えているのは、森にくる鳥などがその種を運んできたのでは。今まで見られた草(いわゆる雑草)は、木が生長するにつれて、森の中では見られなくなった。代わりに苔がみられ、草地は林縁を覆うようになった。食物連鎖の頂点にいるといわれるワシでありクマが目撃されている。本来の自然の生態系ができているのでは、と考える。Yamanarashi

Photo  筆者は2016年度からはじまった生態観察会のメンバーである。観察会で、ふるさとの木(コナラ、クヌギ、ミズナラ、ブナなど)が育つことにより、森に様々な生物が集まってきたことを実感する。
 これら生物たちは、旧松木村があった時に共存していた仲間たちである。これまで裸地・草地だったところに木が生えることで、多くの生き物たちが森に戻ってきたのだ。

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Photo_3  「弱者の戦略」(稲垣栄洋著書)の本によると「生物たちはそれぞれのニッチでNo. 1を競い、勝ったものだけが生き残る。それは単純に強いものがNo. 1というのではなく、その戦略は、植物から動物に至るまでその生物種間でも、多様である。一見弱いような生物でも独自のニッチで生き残る。つまりそれは強いのだ。」と。

Photo_4  足尾は、いま森ができたことにより、互いに生きる多種多様なニッチが形成され、多くの生物が助け合い・支えあいながら競争をしているに違いない。それを可能にしているのが森なのである。今後も樹々の成長と同時にどのような生物が集まり、「生き残っている」のか、その「戦略」は何かなど、森に生かされていることを原点に森から学んでいきたい。それはきっと、人口減少・少子高齢化社会へと変わりつつある人間社会を憂い、いのちよりも経済優先を標榜してやまない人たちと抗い、森と生きる根源を見つけ出す参考になるに違いない。

Photo_5 * ニッチとは、別のことばでいえば、生きるポジションである。
(事務局 宮原哲也)